
帰化申請の書類を作成していると「生計の概要」という書類があり、財産の多さが帰化申請に影響するのか気になる方も多いのではないでしょうか?帰化申請において、貯金の額や資産の有無が結果に影響するのか、本編では解説をしていきたく思います。
もくじ
帰化申請の要件について

帰化申請において「貯金や資産はあったほうがよいのか」と疑問に思われる一つの要因に、帰化に関する要件に安定した生活を送れていることが前提になっていることがあります。国籍法では、帰化するための要件として下記が挙げられています。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
国籍法第5条
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
上記の条文の「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること」という部分で、「貯金や資産があったほうが有利なのではないか」と考えてしまうのではないでしょうか。
一度、他の要件も含めて、帰化申請の要件を簡単に確認してみましょう。
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること
- 20歳以上で本国法によって能力を有すること
- 素行が善良であること
- お金の面で生活に心配がない
- 日本国籍の取得によって母国の国籍を離脱できる
- テロリストや反社会的勢力ではない
- 日本語能力に問題がない
帰化の審査においてポイントになるのは「今までの在留状況に問題は無かったか」「これからも問題なく日本に在留できるか」「本当に日本に定着して生活するのか」といったことになります。過去に不安があっても、また日本で生活するつもりがない場合も帰化が許可されることはありません。
貯金や資産の有無は「お金の面で生活に心配がない(=問題なく日本に在留できるか)」というポイントで審査されることになります。また、日本に家などの不動産があれば「これからも日本に長く住む予定がある」ということをアピールすることにもなるでしょう。
では、貯金や資産は無いと帰化は許可されないのか、またどのくらいの資産を有していればよいのか、というと実際のところ基準はなく、貯金や資産は無くても許可されることになります。
「生活が安定している」ということはどういうこと?

何故、貯金や資産が無くても許可されるのかというと、それよりも大事なことは「生活が安定している」ことだからです。
逆を言えば、貯金や資産が多くても生活が安定していなければ許可されないということです。
- 自分または家族が定職に就き収入と支出のバランスがとれている
- 定年退職等で収入は無くても、十分な貯金がある
- ローンの返済を終えた家に住んでいて、収入は少なくても十分に生活ができる
- 浪費癖や収入に見合わないローンを抱えていない
- ここ数年で自己破産の経験がない
最大のポイントは「自分または家族が定職に就き収入と支出のバランスがとれている」ことです。
家や車のローンがあっても、また収入が少なくても、家族全員の生活や納税に問題がなければ「生活が安定している」と言えます。
仕事は定職に就いていることが望ましいです。転職したばかりや、次の転職に向けた無職の期間は「生活が安定している」という点について不安を残すため、できる限り仕事が安定しているタイミングで申請をするとよいでしょう。
一方で、収入が多くても浪費癖があってカードの支払いやローンの返済が滞っている場合は、生活が安定しているとは言えません。さらに、生活を安定していると見せかけるためにそれまであった負債を無かったことにするために自己破産を行った場合、すぐには帰化申請をすることはできません。
また、これは素行要件にも関わってきますが、生活していくうえで滞りなく納税や年金の支払いができていることもポイントとなります。
「生計の概要(その1)(その2)」の書き方について

帰化申請では、生計や資産についての申告をする書類があります。この書類「生計の概要(その1)(その2)」について説明をします。
生計の概要(その1)の書き方
基本的に実態と合わせて記入します。特に、収入に関しては前月の給与明細を見ながら正確に記入しましょう。「月収」の金額は税金等を控除した「手取り」の金額を記入します。
支出の金額は、通帳の出入金等を見ながら実態に合わせるように記入します。見栄を張る必要はありませんので、こちらも正確に記入しましょう。
また、収入の合計と支出の合計が同じになるように調整してください。
「負債」の部分は前述の通り、返済ができる範囲内のものなら問題ありませんので、隠さず正確に記入してください。

生計の概要(その2)の書き方
不動産については、国内、海外問わず記入します。また、高価な動産には例えば宝石や車といった100万円以上の資産を記入します。
若くして帰化を検討される方は、資産が少ない方も多いと思います。
しかし、気にする必要はありませんので正確に記入しましょう。
間違無意味に貯金が多いことを見せかけるために母国から送金してもらったりする必要はありません。

まとめ

以上、帰化申請における貯金や資産の有無による影響についてまとめました。
結論から言うと、帰化申請に貯金の額やそのほかの資産の有無が帰化申請の結果に大きく影響することはありません。むしろ大切なことは「自分または家族が定職に就き収入と支出のバランスがとれている」ということになります。このポイントは申請結果に大きく影響しますので不安な方は法務局や専門家に相談をしてみましょう。

【行政書士からのアドバイス】
「貯金はあったほうがいいですか?」「家や車は持っていたほうが有利ですか?」といった質問は度々いただきます。帰化申請は、多くの要素がケースバイケース、人生の数だけ確認するポイントが異なります。
帰化を検討されている方で不明な点がある場合には、お気軽にお問合せ下さい。