永住者のビザの申請と帰化申請、どちらの取得を検討するか悩まれている方にとっては、どちらが許可が出やすいか気になりますよね。また、帰化後のメリット・デメリットも気になると思います。本編では、永住者のビザが帰化申請かで迷われている方に向けて、帰化申請について解説していきます。
もくじ
まずは帰化の要件を確認
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること
- 20歳以上で本国法によって能力を有すること
- 素行が善良であること
- お金の面で生活に心配がない
- 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
- テロリストや反社会的勢力ではない
- 日本語能力に問題がない
日本人と結婚して長い方や、日本に移住してきて長い方は、帰化の要件が一部緩和される場合があります。そういった方は「簡易帰化」と呼ばれ、「普通帰化」と比較して日本にいる年数や生計要件が緩和されることがあります。詳細については、下記の記事も参照ください。
普通帰化、簡易帰化にかかわらず「引き続き○年」という文言が入りますが、継続している必要があります。
途中、母国への里帰り出産、仕事の長期出張等の理由にかかわらず、90日以上連続して出国している場合や、1年間で合計で150日以上日本にいない場合は「引き続き」に該当しませんので注意してください。
就労ビザを例に…
【居住要件を満たしているケース】

5年間のうち3年以上就労ビザで働いている必要があります。上記の場合は、満たしています。
【居住要件を満たしていないケース】

途中で1年間母国に帰国し、在留資格がない期間があった場合は、合計で5年日本にいたとしても「引き続き」の部分を満たしていないと判断されます。

在留資格は継続して持っていたとしても、長期で出張する場合にも「引き続き」の部分を満たしていないと判断されてしまいます。
「引き続き」に該当するためには、連続して90日以上日本から出国しないこと(たとえ仕事でもNGです)、また、1年間の合計で150日海外にいるのもNGになりますので注意してください。
永住者ビザと帰化申請の比較
「永住者」ビザの要件
永住者ビザも帰化申請同様に、様々なパターンがあります。例えば「日本人配偶者」や「定住者」、「高度専門職」のビザを持っている人は一部要件が緩和されます。今回は、一般的なポイント・要件について挙げます。
- 引き続き、10年以上日本に在留していること。ただし、この10年以上の期間のうち就労資格又は居住資格を持って引き続き5年以上日本に在留していること
- 現に所有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
※当面、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。 - 日本で真面目に生活している。(税金や年金を滞納していない、犯罪、交通違反でペナルティーを受けすぎていない等)
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(しっかり年収がある、貯蓄があること等)
- 公衆衛生上の観点から、有害となるおそれがないこと
- 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
- 公共の負担となっていないこと(生活保護等を受けていない)

(行政書士)
帰化のポイントと共通しているところが多いですね。
気になる「素行要件」や「生計要件」は共通しています。
「永住者」ビザと帰化申請の気になるポイントの比較
永住者ビザも帰化申請も、特別な条件があると要件が緩和されることがあります。ここでは、一般的な条件での気になるポイントの比較を行います。許可のための要件だけでなく、気になるポイントも比較してみましょう。
ポイント | 帰化申請 | 永住者ビザの申請 |
---|---|---|
日本の居住要件 | 5年 | 10年 |
持っている在留期間の条件 | なし | 3年以上 |
連続した在留期間の条件 | 短い期間で判断され、 長期の出国があるとその都度 リセットされる | 在留期間全体を通して判断 |
配偶者や子どもの条件 | 一部要件の緩和あり | 一部要件の緩和あり |
素行要件 | 厳しく確認される | 厳しく確認される |
生計要件 | 厳しく確認される | 厳しく確認される |
申請中のビザの更新申請 | 必要 | 必要 |
審査期間 | 半年〜1年程度 | 半年〜1年程度 |

(行政書士)
帰化も永住者ビザも許可を得るには非常にハードルが高いです。
取得のための要件は似ている部分がありますね。
他の在留資格との比較の他の記事は下記より参照ください↓↓↓
日本人になるメリットとデメリット

(行政書士)
日本の法律では、帰化をすると母国の国籍を失うことになります。簡単には「元に戻れない」のでメリット・デメリットを比較しながら検討してみてください。
帰化のメリット
- ビザのことで悩まなくて済む
- 住宅ローンやクレジットカードの審査が通りやすくなる
- 日本のパスポートは191か国査証なしで渡航可能
- 選挙権を得られる(投票だけでなく、政治家の立候補、裁判員制度への参加)
- 国籍要件のある職業にも就けるようになる
帰化のデメリット
- 帰化をして日本人になると、母国の国籍を失ってしまう
- 母国に帰国するしようにも、「当然には帰国できない」場合が出てきてしまう
永住者申請と帰化の難易度の違いは…?
同じくらいか、永住者の方が難しいです

(行政書士)
ケースにもよりますが、「永住者」ビザの方が難しい場合があります。
帰化もビザも基本的に要件を満たしていれば許可をいただけます。どちらの申請も、法務大臣に「裁量権」があることが原因で「難しい」と感じさせています。
例えば、帰化申請の要件の一つである「素行が善良」というのは審査官によって判断が違います。(大まかなポイントはありますが。)また、帰化の要件は、確実なポイントの積み重ねで判断されるのではなく、「総合的に見て」判断されます。その総合的に許可の具合についても明確な基準は公表されていません。
永住者と帰化申請では、同じ「素行要件(真面目に日本で暮らしているか)」・「生計要件(日本で不自由なく生活していけるか)」の部分を比較しても、若干、永住者ビザの方が要件が厳しい傾向になります。
例えば、「素行要件」で確認される【年金・税金の支払い】に関して、帰化申請の場合は未納がある場合は申請相談の前にまとめて納めていれば問題ないと言われていますが、帰化申請の場合は滞納していると「真面目ではない」と判断されてしまいます。つまり、申請前に慌てて納めたのでは遅くなります。
また、生計要件に関しても「家族を心配なく養える年収」基準が永住者ビザの方が若干厳しくなります。
ただし、帰化申請と永住者ビザの一番の大きな違いとしては、帰化の場合はあらかじめ法務局がしっかりと要件を満たしているかのチェックをしてもらえます。
そして、あらかじめ許可の見込みがある人だけが申請をすることになります。そのため、許可率も9割近くと非常に高くなっています。一方の永住者ビザの場合は、申請受理から結果が出るまで半年〜1年かかり、許可率も高くありません。
自分の気持ちを大切に
帰化申請では「あなたは、これからも日本に住みますか?」ということを重要視されています。
やはり、一定数の方で帰化後に海外に移住される方も多くいます。
「やはり、子育て・子供の教育は母国でしたい」と言う理由であったり、帰化後すぐに離婚をしてしまい日本を離れることになったりと、離れる理由は問わず帰化後は日本に住むことを日本政府は望んでいます。
ビザが面倒臭くて、手っ取り早く日本人になってしまいたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。日本の最強パスポートがあれば一時的に母国に帰るのも大した問題ではないかもしれません。また、ある程度貯金ができたら母国に帰ろう、と思っている方もいるかもしれません。
しかし、日本では「近い将来に母国に移住する予定の人」は基本的には帰化できません。
確かに「日本人配偶者等」ビザを持っていてお子さんがいらっしゃる場合は、できるだけ自分の身分をより確定させたいと思われる方も多いと思います。
しかし、帰化申請には時間と労力が必要です。「ビザが面倒くさい」という理由だけなら、帰化申請はしないことをおすすめいたします。

(行政書士)
黙っていればバレないかもしれませんが、かなり大変なので覚悟が決まってない場合は挫折してしまうと思いますよ…
申請時の注意点
帰化申請・永住者ビザ、双方に共通して言える注意点があります。それは、申請中もビザの更新を行わなければならないことです。
大事なことなので2度言います。帰化申請中・永住申請中でもビザの更新は必要です。
また、これは永住者ビザの注意点になりますが、永住許可は取得できれば「永住が約束される」わけではありません。適切な在留をしなければ在留資格の取り消し対象になります。出入国在留管理局にその後も在留状況を管理されることになりますので注意してください。
まとめ
以上、帰化申請と「永住者」ビザの比較についてご説明致しました。
結論から言うと、「永住者」ビザと帰化申請にはそれぞれメリット・デメリットがあります。「比較をしてみたけれども、やっぱり母国の国籍のままでいい!」という方は、永住者ビザの取得に挑戦されるのがよいと思います。
(行政書士)
まずは、帰化の要件を確認してみましょう。