
在留資格「高度専門職」は特に優秀な人材が取得することができる在留資格です。日本で働いていて、日本語も上達し年収も上がると「高度専門職」の在留資格が気になってくる方もいらっしゃるかと思います。特に、「高度専門職」は在留期間も長く、周りで働いている人が「高度専門職」へ在留資格を切り替えることができると、もしかしたら自分も該当するのか気になりますよね。本編では、「高度専門職1号・2号」と「帰化許可申請」について比較をしてみます。
もくじ
在留資格「高度専門職」ってどんな在留資格(ビザ)?

在留資格「高度専門職」は、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などのアップグレードの位置づけになる在留資格です。
「高度専門職」は「日本の経済成長等に貢献することが期待される高度な能力、資質を持つ外国人が円滑に日本に来られるようにする」という日本政府の方針のもとにできた在留資格です。
「高度学術研究活動(高度専門職1号(イ))」「高度専門・技術活動(高度専門職1号(ロ))」「高度経営・管理活動(高度専門職1号(ハ))」に分類し、学歴や職歴、年収、功績などにポイントを設け、ポイントの合計が70点以上の場合に与えられる在留資格です。
▶出入国在留管理庁『ポイント評価の仕組み』
「高度専門職1号」について
「高度専門職1号」は行う業務内容によって、さらに「イ・ロ・ハ」に分類されます。各業務の内容は下記になります。
- 「高度専門職(1号イ)」:特定の本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動
- 「高度専門職(1号ロ)」:特定の本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動。
※「技術・人文知識・国際業務」の「国際業務」は該当しないイメージです。 - 「高度専門職(1号ハ)」:特定の本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動。
「高度専門職1号」の場合、上記の業務内容であり、かつ法務省が発表しているポイント計算表のポイントが70点以上であることが条件になります。
「高度専門職2号」について
「高度専門職2号」の在留資格は、「高度専門職1号」から変更申請をすることで切り替える在留資格になります。在留資格「永住者」同様に在留期限は無期限になりますが、「高度専門職」に定められた活動をし続ける必要があります。「永住者」はどのような仕事をしてもいいですし、もちろん仕事をしなくてもよいビザです。「永住者」は通常、10年以上日本に適法に在留してなければ申請ができませんが(条件によって特例あり)、「高度専門職2号」の場合はそれよりも短い時間で申請が可能です。「永住者」との大きな違いとして、働き続けなければならないことが挙げられます。(つまり、定年退職や都合により働けなくなった場合は、「永住者」などの別の在留資格に切り替えるか、帰国そしなければならないということになります)
高度専門職2号の要件は下記になります。
- ポイントの合計が70点以上であること
- 「高度専門職(1号ロハ)」で在留していたものについては報酬年額合計が300万円以上である
- 「高度専門職1号(イロハ)」で3年以上在留していた
- 素行が善良である
- 当該外国人が日本国の利益に号すること
高度専門職の方が永住許可申請をする場合の要件について
「高度専門職」の場合、永住許可に必要な要件が緩和されます。
出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。
高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。
「永住者ビザ」と「帰化申請」の比較の詳細は下記になります。「永住者」ビザが気になる方は下記の記事もチェックしてみてください。
帰化(国籍変更)の要件

日本で長く生活することを考えている方の場合、国籍変更(帰化)への変更も検討される場合もあるのではないでしょうか。まずは、帰化許可申請に必要な要件について確認してみましょう。
①住居要件:継続して5年以上日本に住所があること
②能力要件:18歳以上で本国法によって能力を有すること
③素行要件:素行が善良であること(税金や年金をきちんと収めて、交通違反や犯罪をおかしていないこと等)
④生計要件:本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること
⑤喪失要件:日本国籍取得によって、母国の国籍を失えることができること。もしくは無国籍者
⑥思想関係:日本政府を攻撃するような思想を持っていたり団体に属していないこと
⑦日本語能力:日本で生活する程度で困らない以上の日本語能力があること
日本人と結婚して長い方や、日本に移住してきて長い方は、帰化の要件が一部緩和される場合があります。そういった方は「簡易帰化」と呼ばれ、「普通帰化」と比較して日本にいる年数や生計要件が緩和されることがあります。詳細については、下記の記事も参照ください。
就労ビザを例に…
【居住要件を満たしているケース】

5年間のうち3年以上就労ビザで働いている必要があります。上記の場合は、満たしています。
【居住要件を満たしていないケース】

途中で1年間母国に帰国し、在留資格がない期間があった場合は、合計で5年日本にいたとしても「引き続き」の部分を満たしていないと判断されます。

在留資格は継続して持っていたとしても、長期で出張する場合にも「引き続き」の部分を満たしていないと判断されてしまいます。
「引き続き」に該当するためには、連続して90日以上日本から出国しないこと(たとえ仕事でもNGです)、また、1年間の合計で150日海外にいるのもNGになりますので注意してください。
「高度専門職1号・2号」と「帰化許可申請」の難易度の違いは・・・?

永住を見据えて「高度専門職」に変更するか、日本により安定的に国籍変更するか悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。是非、ご自身の気持ちを大事に正直に検討されてみてください。
両方とも難しい申請になります
- 「高度専門職」1号・2号・・・ポイント計の条件を満たしていなければならない
⇒学歴や高い年収の要件があり日本に在留しているからと言って誰でも取れるものではない。また、企業に就職することが前提条件 - 「帰化許可申請」・・・日本に長く適法に滞在していれば、学歴等は関係なく申請条件を満たす場合が多い。
「高度専門職」も「帰化許可申請」も求められるポイントが大きく異なるため、一概に比較をすることはできません。
おそらく、「高度専門職1号」か「帰化許可申請」かで悩んでいる方は、すでに「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」ビザで在留している方が多いと思います。「高度専門職1号」は切り替えると「5年」の在留期限になりますが、基本的に転職をする場合は「在留資格変更許可申請」をその都度行わなければなりません。
また、「高度専門職2号」を検討されている方は、すでに「高度専門職1号」を持っており「永住者」ビザとも比較されているのではないでしょうか。「高度専門職2号」は在留期限は無期限になりますが、「永住者」ビザとは異なり、所属機関に関する届け出義務があること、また在留資格該当性のある活動を6か月以上行わない場合、在留資格取り消し事由に該当する場合があります。
自分の気持ちを大切に
帰化申請では「あなたは、これからも日本に住みますか?」ということを重要視されています。
やはり、一定数の方で帰化後に海外に移住される方も多くいます。ビジネスの拠点をやはり母国に移したい!等理由は様々です。
しかし、帰化をするからには、帰化後も日本に住むことを日本政府は望んでいます。
ビザが面倒臭くて、手っ取り早く日本人になってしまいたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。日本の最強パスポートがあれば一時的に母国に帰るのも大した問題ではないかもしれません。また、ある程度貯金ができたら母国に帰ろう、と思っている方もいるかもしれません。
しかし、日本では「近い将来に母国に移住する予定の人」は基本的には帰化できません。
帰化申請には時間と労力が必要です。「ビザが面倒くさい」という理由だけなら、帰化申請はしないほうがよいです。
まとめ

以上、「高度専門職1号・2号」と帰化許可申請の比較についてご説明致しました。
「高度専門職」の在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」のグレードアップした在留資格になります。在留期間も5年で、またその後の永住申請もしやすくなるなど、優遇された在留資格と言えます。一方、文字通り、帰化は日本人になることです。日本人になれば在留資格や活動内容を気にすることはなくなります。在留資格の変更と、帰化は全く性質が異なるため、よく比較検討をされてください。

【行政書士からのアドバイス】
「高度専門職」の方は、評価基準となるポイント制の結果にもよりますが最短で1年で永住申請をすることが可能です。一方で帰化申請にはこのような特別な措置はありません。
当事務所では、就労ビザの相談・申請も承っています。検討したい場合にはお気軽にご相談下さい。