
夫婦で帰化申請をする場合、要件と書類の点でメリットがあります。要件については、1人が許可されることで自動的に「日本人の配偶者」の緩和された要件で審査されることになります。また、必要書類については、夫婦共通の書類など1部の書類について共有できるため、若干楽になります。
本編では、外国籍夫婦が帰化申請をするためのポイントについて解説します。
帰化の要件について

帰化許可申請は「日本人」になるための手続きです。夫婦の内1人が許可されると、もう片方は「日本人の配偶者」に該当する要件を満たしていれば帰化ができます。つまり夫婦2人ともが、「普通帰化」の厳しい要件を満たしている必要はありません。
ここでは、本体者(普通帰化の要件を満たす人)と配偶者(本体者の帰化許可後に日本人の配偶者となる方)に分けて要件を確認します。
本体者が見たすべき要件について
外国で生まれで例えば留学生でそのまま日本で就職した方や、日本に働きに来られた方などの場合などの方の多くは、下記の要件(普通帰化の要件)を満たす必要があります。これは国籍法第5条に定められている内容です。
②能力要件:18歳以上で本国法によって能力を有すること
③素行要件:素行が善良であること(税金や年金をきちんと収めて、交通違反や犯罪をおかしていないこと等)
④生計要件:本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること
⑤喪失要件:日本国籍取得によって、母国の国籍を失えることができること。もしくは無国籍者
⑥思想関係:日本政府を攻撃するような思想を持っていたり団体に属していないこと
⑦日本語能力:日本で生活する程度で困らない以上の日本語能力があること
基本的に日本で真面目に生活していることが求められます。特に注意が必要なのが、年金などに未納があっては帰化できません。また犯罪や交通違反が多い方も帰化できない場合もあります。
よく当事務所にもご質問をいただく内容として年収や貯金については、家族全員でしっかりと生活できるほどの年収が無ければなりません(在留資格『永住者』程は厳しくありません)。これに関しては、生活水準によるため明確な金額はありません。もし、気になる方は当事務所にご相談にいらっしゃってください。
そして、実はよく見落としがちなのが「①居住要件」です。長期出張や規制などで日本を【連続して3ヶ月】や【年間の半分】出国している場合は、日本に住所があっても要件を満たさない場合があります。
まずは、家族で1人この要件をしっかりと満たす必要があります。
配偶者が満たすべき要件について
本体者の夫や妻などの配偶者は、申請時点では国籍法5条で定められた「普通帰化」の要件を満たしていなくても問題ありません。本体者が日本人になることで要件は「日本人の妻や夫」という扱いになり、満たすべき要件は以下の通りです。
・日本人の配偶者(妻・夫)であって、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に住所を有する者
・日本人の配偶者(妻・夫)であって、婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する者
上記のどちらかを満たす必要があります。
②素行要件:素行が善良であること(税金や年金をきちんと収めて、交通違反や犯罪をおかしていないこと等)
③生計要件:本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること
④喪失要件:日本国籍取得によって、母国の国籍を失えることができること。もしくは無国籍者
⑤思想関係:日本政府を攻撃するような思想を持っていたり団体に属していないこと
⑥日本語能力:日本で生活する程度で困らない以上の日本語能力があること
配偶者(妻・夫)の場合、②の生計要件は世帯で考えれば問題ありません。そのため【本体者】によって生計が維持されていることが説明できれば十分です。
また、妻の場合で注意が必要なこととしては、出産を母国でした場合など直近で日本を【連続して3ヶ月】や【年間の半分】出国している場合は帰化申請は許可されません。この場合は、しばらく日本にいてから申請することになります。
来日歴の浅い配偶者(妻・夫)の場合で特に注意が必要なのが日本語能力です。必要なレベルは小学校3年生レベル、また話すだけでなく読み書きもできなければなりません。漢字も小学校1,2年生レベルは【書ける・読める】必要があります。場合によっては面接の際に日本語のテストを行う場合もあるため、自信が無い方は、練習をするようにしましょう。
夫婦で帰化申請するメリット/デメリット

夫婦で帰化申請をするためのメリット・デメリットについて確認をします。
メリット
夫婦で帰化申請を行う場合、片方が何らかの帰化の要件を既に満たしていれば、配偶者の方は本体者の許可の時点で「日本人の配偶者」としての要件を満たしていれば同時に許可がされます。そのため、申請時点で要件を満たしていなくても同時に帰化申請をすることができます。
同時に申請することのメリットは、共有できる書類についてや結婚後の情報は共通の場合が多いため、その部分の書類収集が楽になることと、結婚後の流れについても同時に書類作成ができるため楽になるはずです。意外に、今までに住んでいた住所を調べる作業は面倒だったりします。
デメリット
デメリットは、夫婦同時での申請でないことによる不許可のリスクが生じることです。
夫婦であるのに国籍を別々にすることの理由をきちんと説明できない場合は、不許可となる場合があります。法務局は、帰化後は日本に住むことを望んでいるため、夫婦同時の申請でない場合は移住する気があるのかどうかを疑います。基本的には、夫婦や家族は同時に帰化申請することが望ましいと思われます(もちろん、別々に帰化許可申請を行っても許可は出ます)。
まとめ

以上、夫婦で帰化許可申請するための要件についてまとめました。
夫婦で帰化申請をする場合、申請時点に片方が何らかの帰化の要件に当てはまっていれば、本体者が許可されれば「日本人の配偶者」の緩和された要件で審査されることになります。また一部の書類については共有できる部分もあり、手続きも少しだけ楽になります。

【行政書士からのアドバイス】
夫婦そろって帰化申請をする場合は、どちらかが帰化の要件を満たしていれば、その方のパートナーの要件は緩和される場合があります。
要件を満たしているか気になる方は、当事務所にお問合せ下さい。
