
帰化申請のうち国籍法の第5条に該当する「普通帰化」の要件は、18歳以上で5年以上日本に住んでいることになります。では、5年以上日本にいる学生は帰化ができないのでしょうか?実はケースごとにそうできる場合とできない場合があります。本編ではケース別に解説をしたく思います。
もくじ
ケース1.留学生として来日し、現在も学校に通っている場合

ケース1の場合は多くの場合は、帰化は難しいでしょう。
国籍法の第5条を見てみましょう。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
国籍法第5条
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
留学生として来日し、例えば日本語学校に1年半~2年通い、その後専門学校や大学に通った場合、多くの場合は帰化を検討する時点では18歳以上であることがほとんどかと思います。
しかし、第5条には重要な条件が明記されておりません。それは、5年のうち3年以上を就労系の在留資格を持って働いていなければならないことです。
「留学」ビザの場合、資格外活動許可を取得することでアルバイトをすることができます。しかし、これは「3年間働いていた」とみなされるわけではないので注意してください。

一方、留学ビザから就労系のビザに切り替え、合計5年になった場合は帰化申請の要件に当てはまります。
では、例えば留学ビザで来日し、卒業後に就労ビザに切り替え3年働いた後、働いているうちに大学への進学を希望し、入学した場合(合計で5年間日本にいた場合)はどうなるでしょうか?
この場合、「四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。」という部分で多くの学生が難しくなるはずです。
生活や学費のために週28時間以上アルバイトをしている場合は、「素行が善良ではない」と判断されるため、その他の要件を満たしていても帰化申請はできません。
ケース2.父母のどちらかが日本人の場合

ケース2の場合は、帰化できる可能性が高いです。
国籍法の第8条を見てみましょう。
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
第8条
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの国籍法
上記にある通り、日本人の子どもで日本の学校に通っているような状況であれば、帰化申請は可能です。両親ともに日本人である必要はなく、父母の一方が日本人であれば足ります。また、日本国民であるかどうかは、帰化申請の時点で判断されることになります。
さらに、第8条に該当する場合の帰化に関しては居住要件、生計要件、生計要件についても緩和されます。つまり、以下の条件は満たしている必要はありません。
- 5年以上日本に住み、そのうち3年以上就労系の在留資格を持って働いていること
- 18歳以上であること
- 自己または生計を一つにする親族の財産等をもって安定的な生活をおくれること
上記の理由から、父母のどちらかが日本人の場合は、学生であっても帰化の要件を満たす場合が多くなります。
ただし、生まれたときに両親の片方が日本人だった場合、18歳未満の場合には帰化申請ではなく、国籍選択の手続きで日本国籍を選ぶことができる場合もあります。ケース2では、生まれた時点では両親ともに外国籍の場合や、一度子どものときに外国籍を選んだ場合のケースとなります。
▶参考:法務省『国籍の選択について』
ケース3.両親は外国人だけれど、自分は日本で生まれた場合

この場合は、帰化申請できる場合とそうでない場合に分かれます。
①父母のどちらかも日本で生まれた場合
①の場合は、年齢や生活の状況次第によります。
帰化できるケースとしては、3年以上日本に住所もしくは居所がある場合は帰化申請ができます。(国籍法6条2号)ただし、この場合では「20歳以上」「生活が安定している」ということが必要です。現在、就労を制限されている在留資格の場合(「留学」ビザや「家族滞在」ビザ)では、生活費や学費を資格外活動許可の範囲以上(週28時間以上のアルバイト等)で働いている状態では、安定的な生活が送れない、また素行がよくないと判断されてしまいます。
②父母のどちらかが以前は日本人だった場合
②の場合は、年齢や生活の状況次第によります。
帰化できるケースとしては①と同様に3年以上日本に住所もしくは居所がある場合は帰化申請ができます。(国籍法6条1号)②の場合でも「20歳以上」「生活が安定している」ということが必要です。さらに、現在「留学」ビザや「家族滞在」ビザで在留されている方に関しての注意点についても①と同じです。
「生活が安定しているか」については個別判断が必要になります。①、②に該当する方で学生の場合は、法務局で相談をされることをお勧め致します。
- 自分の志望により外国国籍を取得したことにより日本国籍を喪失した者
- 外国国籍の選択により日本国籍を喪失した者
- 国籍選択の催告により日本国籍を喪失した者
- 国籍喪失の宣告により日本国籍を喪失した者
- 国籍不保留により日本国籍を喪失した者
③父母も帰化申請を検討している場合
③の場合、父母が現在外国人であっても、父母が帰化の要件を満たしている場合で父母と一緒に帰化申請をする場合は、帰化ができる可能性が高くなります。
現在は自分一人では帰化の要件を満たしていなくても、父母と一緒に帰化申請をする場合、父母の帰化が許可されることで、自動的に「日本人の子ども」としての要件(国籍法8条1号)を満たせばよくなり、同時に許可される場合があります。(ケース2と同じ状態になります)
多くの場合、家族と一緒に申請したほうが楽なことが多いです。作成する書類や集める書類に共通する事項が多くなります。
まとめ

以上、学生でも帰化できるケースについて説明致しました。
学生の場合「普通帰化」の場合は帰化申請が難しくなりますが、「簡易帰化」に該当する場合は帰化できるパターンもあります。ただし、個別に判断する必要も多くなるため、法務局か専門家に状況を説明し正確な判断をもらったほうがよいでしょう。

【行政書士からのアドバイス】
学生が帰化申請を検討するは、両親と一緒に行う場合は可能性がありますが、そうでない場合はケースバイケースとなります。イレギュラーな事例に近くなってくるため、法務局もしくは帰化の専門家に相談されてください。