結婚のスタイルや価値観も日々変化しています。結婚前の妊娠や、事実婚のように入籍をしないパートナー関係も珍しくありません。でもそうなると子どもの国籍が気になるところです。本編では、子どもの国籍について解説いたします。
子どもが日本国籍を取得できる場合について
少し難しい話にはなりますが、前提として、国籍法では「生物学上の親子」ではなく「法的な親子」が前提になります。
出生時に結婚している状態の場合
国籍法では子どもが日本国籍である条件として下記のように定めています。
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
国籍法 2条
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
ポイントは、「出生の時に父または母が日本国民」であるということです。この父・母というものは生物学上ではなく法律上になります。
母親は「分娩」の事実をもって法律上も「母」になります。つまり、日本人の母から生まれた子どもは日本国籍となれます。
父親はどうでしょうか…。生物学上では父親であっても、法律的に父親になるための方法は2つあります。
それは、「結婚」と「認知」がキーワードになります。
民法では、嫡出子について、法律上の婚姻関係にある夫婦間に生まれた子供の事をいいます。法律上の婚姻関係は、婚姻届を市区町村役場に提出し、受理されることで成立します。
また、民法772条においては「嫡出子の推定」について定めています
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は夫のこと推定する
民法 772条
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したと推定する
いわゆる「授かり婚(おめでた婚)」の場合も、出生時に2人が結婚をしていれば戸籍は「嫡出子」となりますので、法律上の父親となります。
つまり、出産時に子どもの親にあたる日本人と結婚していれば日本国籍は取得できることになります。
結婚はしない場合
結婚しない場合に、子ども「父親」になる方法が「認知」と言うことになります。
当然のことですが、日本人父と子どもが本当に親子でなければ認知は「無効」となります。
胎児のときに認知をする
国籍法2条では「出生の時に父又は母が日本国民」であれば子どもは日本人であると定めていました。くどいようですが「法律上の父」であれば、結婚は必ずしも必要ありません。つまり、妊娠中に「認知」をしていれば条件を満たします。これを「胎児認知」と言います。
後から説明するように、生まれた後でも認知はできます。しかしその場合は日本国籍を取得するのに、「国籍取得届」の提出が必要になります。一方で、胎児認知を行った場合は「出生届」で足ります。
生まれた後に認知をする
もちろん、生まれた後でも認知をして、日本国籍取得の要件を満たすこともできます。
これは、国籍法3条に定められています。
第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
国籍法3条
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
子どもが20歳未満であり、子どもの出生時も現在も認知した父または母が日本人であれば日本国籍を取得できます。
この場合は、「国籍取得届」を提出することになります。
こちらの場合は手続きが少し増えます。子どもは外国人として生まれてくるため、まず母国のパスポートを取得して、在留資格を取得しなければなりません。
父親に「認知届」を提出してもらった後に、「国籍取得届」を行います。これによって日本国籍を取得することになります。
パートナーとの生活スタイルや価値観も様々です。
結婚をしない理由があっても、特段の事情がなければ妊娠中に認知してしまった方が手続き的には楽になります。
自分の子供でないと主張するには…
「もしかして、何かよからぬことに巻き込まれている…?」
と、思われている男性は親子ではないと主張することもできます。結婚後に生まれた子どもの場合、結婚から200日以内の場合は「親子関係不存在の訴え」、それ以外の場合は「嫡出否認の訴え」、結婚していない場合は推定の及ばないこの場合は「親子関係不存在の訴え」を行います。
日本でも在留を希望する外国籍の方の中には、手段を選ばない方もいます。その代表例が偽装結婚です。子どもが日本国籍の場合、日本に在留しやすくなるのも事実です。自分の身は自分で守りましょう。そして大ごとになる前に、弁護士等の専門家に相談しましょう…
父子関係 | 手続き |
---|---|
嫡出子 | 嫡出否認の訴え |
200日以内に生まれた嫡出子 (推定を受けない嫡出子) | 親子関係不存在の訴え |
推定の及ばない子 | 親子関係不存在の訴え |
訴えの対象となる子 | 誰が (訴えを提起しうる者) | 誰を (訴えの相手方) | いつまで (出訴期間) | |
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嫡出否認の訴え | 嫡出子 | 父のみ(否認権者) | 子又は親権を行う母に対して | 夫がこの出生を知った時から1年以内 |
親子関係不存在確認の訴え | ・200日以内に生まれた嫡出子 ・推定の及ばない子 | 利害関係を有する者ならば誰でも | 人事訴訟法12条参照 | 制限なし |
まとめ
以上、結婚前に妊娠した場合の子どもの国籍についてご説明いたしました。
もしかすると、子どもが欲しくて帰化を急がれていた方もいるかもしれません。子どもの出生時に父または母のどちらかが日本人であれば、日本国籍を取得することは可能です。出生時に結婚が成立していれば手続きなく日本国籍になりますし、生まれた後も認知をすれば「国籍取得届」で日本国籍を取得することができます。