帰化申請は申請が受理されるまでに半年、審査期間に約1年かかると言われています。帰化したいと決断されてから日本国籍が取得されるまでに計画的に準備をすすめたとしても1~2年かかることになります。本編では、帰化申請を早く進めるための3つのポイントを説明します。
まずは帰化申請のながれについて
まず、帰化申請の基本的な流れを説明します。
「帰化をしよう!」と思ったら、まず法務局に相談にいきます。
法務省HPのページを見ても非常にシンプルで、何をどうしたらいいかは一切書かれていません。ちなみに、「帰化許可申請書」の見本が掲載されていますが、帰化申請の場合は「申請書」1枚提出すれば済むような話ではありません。大量の書類の準備をしなければなりません。その準備のために法務局へ相談に行くことになります。
法務局は、お住まいのエリアを管轄するところに行きます。
帰化の希望者はかなり多く、都市部の法務局は予約を取るのに1〜2ヶ月かかることもあります。
法務局では、まずあなたが帰化の要件を満たしているかのヒアリングを行い、集めなければならない書類を教えてもらえます。
帰化申請は、ビザの申請と異なり法務局の相談員の方と相談を何度も行います。
基本的に、「許可の見込みがある人」だけが「申請」することになります。その後、書類の準備が完了し申請が受理されると審査期間に入り、その後1年程度で結果が出ます。
帰化申請の流れの詳細は下記でも解説しております。
ポイント① 申請ができる状態のときに申請する
最も時間がもったいないのは、要件を満たしていない場合に申請をして、結局1年ぐらい待たされた挙句に不許可になってしまうことです。
早く帰化したいと焦る気持ちも分かりますが、条件が整っていないときに申請をしようとしてもよい結果になりません。じっと我慢しなければならないときもあります。
具体的な例を以下に挙げます。
申請すべきではない時期1 ~そもそも要件を満たしていない~
これは永住申請をされる方にも多いのですが、要件に必要な「5年」を待たずに申請しようとされる方がいらっしゃいます。永住申請の場合はできるのですが、帰化申請の場合は申請をさせてもらえません。法務局で交渉しようと思ってもどうにもならないので、ここはじっと我慢をして下さい。
また、年収が低い方も急いで申請するよりも、年収を上げることを優先されることをお勧めいたします。目安ですが独身の方で扶養家族がいない方は年収300万円、家族3人の場合は400万円は最低限あったほうが安心です。
申請すべきではない時期2 ~転職したばかり・近々転職をしたい~
転職回数が帰化申請の結果に必ずしも影響を与えるものではありませんが、転職をすると一時的に年収が下がってしまう場合があります。そうすると「生活が安定していない」と判断されてしまうリスクがあり、不許可になってしまう場合もあり注意が必要です。
また、同様に近々転職をしたい方も同じで、できれば転職を完了させて収入が安定してから帰化申請を行うか、もしくは帰化の許可を得られるまで転職を我慢するか選択したほうがよいです。
申請すべきではない時期3 ~起業したばかり・会社の業績がイマイチ~
②の理由とほとんど同じですが、起業自体は帰化申請の結果に必ずしも影響をあたれるものではありません。しかし、起業は大きなリスクを伴います。売上が安定し、利益が出るまでは帰化の審査結果に大きな影響が出ることは間違いありません。
前年の決算内容がよくなく、今期の決算内容がよい場合は、今期の決算報告書を提出したほうが印象がよい場合もあります。この場合は少し帰化を待つ猶予があるのであれば、決算を経てから申請するほうがよいでしょう。
帰化を優先して行いたい方は、帰化の結果が出るまでは起業準備にあて、帰化が完了してから起業されることをお勧めします。ご自身にとって何が最優先かをよく考えて優先順位を決めましょう。
申請すべきではない時期4 ~在留資格の更新を間近に控えている~
在留資格の更新を間近に控えている場合、「更新申請が終わってから再度来てください」と言われる場合もあります。在留資格の更新申請は、在留期限の3か月前から申請可能です。まずは更新を済ませてしまわれることをお勧めします(不許可になってしまったら、帰化申請も当然不許可です)
申請すべきではない時期5 ~そもそも在留不良~
次の在留期間の更新がうまくいかないのではないかとドキドキしながら、帰化申請をすることは絶対によくありません。帰化申請中も在留資格の維持は必要です。期限が来たら更新申請をしなければなりません。まずは、現状を整えることをお勧めします。
ポイント② 申請をすると決断したら、一気に準備を進める
「ええ、こんなこと!?」と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、意外に重要なことです。
20種類以上の書類を集め、8種類以上の申請書類を作成し、平日に何度も休みを取って法務局に行くことは本当に面倒くさいことです。
事実、あまりにも面倒くさくて諦められる方も実は多いのです。
「やるぞ!」と決められたら一気に準備をする。これは早く申請をするための大事なポイントです。
ポイント③ 本当に急いでいる人は、初めから専門家にお願いする!
帰化申請は、本人による申請が基本です。
帰化申請は準備が整うまで何度も法務局に通う必要があります。法務局は平日の日中しか空いておらず、忙しい中時間を作る必要があります。
おおよその回数にはなりますが、日本語レベルが日本語検定2~3級レベルの方の場合は4~5回、日本語レベルが日本語検定1級レベルの方で3~4回平均して通われているようです。
また、会社を経営されている方や今までの経歴が長い方の場合、集める書類も作成する書類も複雑になるため、法務局に通う回数が多くなる傾向があります。
代理申請が認められる場合
15歳未満(14歳までの人)の場合は、代理人の申請が認められています。
ただし、誰でもよいというわけにはいきません。法定代理人のみ認められます。
法定代理人とは、原則としてその者に対して親権を行使できる人のことです。各国籍で法定代理人になれる人は「法の適用に関する通則法」内で定められています。分かりやすいところで言えば、親になります。
親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。
法の適用に関する通則法 32条
15歳未満の場合は、書類も一部(写真、履歴書、動機書、宣誓書)免除になります。申請中に15歳になったとしても追加で書類の提出を求められることは原則ありませんが、早めの準備をするようにしてください。
専門家に依頼するメリットとは
専門家に依頼するメリットはずばり「自分だけで申請するよりも早い」という点です。
- 自分でやれば初回の相談時には「何を集めるか」を聞くところから始まるが、専門家に始まれば初回の相談時には、書類を集めた状態で行ける(1回節約!)
- 場合によっては、初回相談時に受付をしてもらえる場合もアリ
- 書類の集め方にも慣れている・ノウハウがある
- 申請書類を作成してくれるため、日本語に悩む必要もない
帰化申請をスムーズに行うための最大のポイントは、「いかに少ない回数で書類を完璧に揃えるか」ということになります。
帰化の申請で一番時間がかかるのは、書類を集めてから法務局で確認してもらい、修正をしてもらうために何回も往復することです。「完璧に書類を揃えたつもり」でも、相談員の方から指摘を受けて集め直すことになります。加えて、法務局の帰化の相談は非常に予約が取りにくく1か月待ちも普通です。
一方で、帰化の専門家にはノウハウがあるため、今までの申請パターンからある程度必要な書類を予測することができます。
特に帰化申請は審査期間も含めるとかなり長い期間が必要なため、気軽に相談できる相手がいるということは非常に安心ですね。
また、相談のみの場合、法務局によっては代理人のみの相談を認めている場合もあります。
この場合の代理人は、行政書士や司法書士、弁護士等の申請人本人から委任されている人のことを指します。
通常ですと、自分が帰化できる状態であるかを法務局の相談員の方に見てもらい、帰化の要件を満たしているような場合は必要な書類を教えてもらえます。
この必要書類はその人の国籍や家族構成、今までの日本での滞在歴、入国から現在までの在留資格によって変わるため、言ってしまえば申請人ごとの“オーダーメイド”になります。このため、あまりにも複雑な場合だと法務局に通う回数が多くなりがちですが、本人が絶対に法務局に行く必要があるのは「申請時」のみのため、代理人に委任することで途中の申請書類リストの入手や書類の確認作業は法務局に行く必要はありません。
ただし、途中の法務局との交渉を代理人に委任できるかどうかは、法務局によっても変わってくるため、結局全て通う必要がある場合もあります。(関東ではさいたま地方法務局が該当します)
帰化の専門家って誰?
帰化の専門家は、弁護士や司法書士、行政書士になります。
ただし、それぞれの士業にはさらに「専門分野」があるので、「帰化専門」の人に頼むようにしましょう。
もしあなたに、日頃からビザ(在留資格)のことでお世話になっている行政書士がいれば、その人に相談するのが一番よいと思います。
まとめ
以上、帰化申請で早く許可をもらうための3つのポイントを解説しました。
帰化申請は時間がかかります。焦って申請をしてもよい結果にならない、難しい申請です。事前に丁寧に準備をすることが早く許可を得られるコツにもなります。自信のない方で急いでいる方は、専門家に依頼するのも一つの手段です。検討してみてください。
【行政書士からのアドバイス】
帰化申請は、要件さえ満たしていればすぐに申請が受理され、すぐに帰化できるというものではありません。審査期間も約1年と非常に長く、生活が安定していて、これから大きな変化がないと思われるタイミングを見計らって申請をすることが、いち早く帰化するためのポイントになります。
また、人生の中でも重大な決断にもなるため、不安は全て取り除いた状態で申請されるのがよいと思います。