帰化申請をする際に、やはり気になるのが今までの転職の回数とこれからの転職についてです。転職を先にするか帰化申請を先にするか、またその場合の帰化申請の結果についての影響も気になるところだと思います。本編では、転職回数と帰化申請に与える影響について解説をします。
まずは帰化申請のポイントを解説
まずは、帰化申請ができる方の要件について解説します。
帰化申請については、国籍法5~8条の中で定められており「普通帰化」と「簡易帰化」に大別できます。
日本に就職のために来日して、日本人の家族がいないような場合、「普通帰化」に該当する方が多くなります。「普通帰化」を申請するために必要な要件は以下になります。
②能力要件:18歳以上で本国法によって能力を有すること
③素行要件:素行が善良であること(税金や年金をきちんと収めて、交通違反や犯罪をおかしていないこと等)
④生計要件:本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること
⑤喪失要件:日本国籍取得によって、母国の国籍を失えることができること。もしくは無国籍者
⑥思想関係:日本政府を攻撃するような思想を持っていたり団体に属していないこと
⑦日本語能力:日本で生活する程度で困らない以上の日本語能力があること
帰化申請に求められる要件のうち、生計要件において「本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること」とされています。法律の条文では「年収」や「貯金」で必要な額については定めておりませんが、「安定した生活」を送れていることが許可の一つのポイントとしています。
転職回数自体は、帰化申請の過程でそのことだけで不利になることはありません。つまり、交通違反と違い「5回以上転職したから」といって必ずしも不許可になるというわけではありません。しかし、少なからず、転職が帰化申請の審査に影響を及ぼすことは事実です。
転職が帰化申請に及ぼす理由を説明したいと思います。
転職回数が多いと帰化申請に及ぼす3つの影響について
転職や転職回数が帰化申請の審査の結果に大きな影響を与えるわけではありません。しかし、転職することによって少なからず生活に影響があると思います。この生活に与える影響という観点から確認をしてみましょう。
影響ポイント1:年収
帰化申請の審査のポイントの一つに「本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること」が挙げられます。
転職や起業は、一時的ではあるものの生活を不安定にする要素とみられます。特に、日本の多くの場合、転職1年目は収入が大きく下がることは稀ではありません。理由は、年収に大な割合を占める「ボーナス」が、1年目の場合、満額支給されない場合があります。また、研修給がある場合にはその分給料が下がることが考えられます。
よく帰化申請において、「年収はどのくらい無いと許可されませんか」と聞かれることがあります。実際のところ、これに対して明確な返答はできません。これは家族構成や、家族の収入、生活レベルなどによって左右されるからです。そして、見られているのは「家計」であって「その人自身の収入」のみだけで判断されるわけではありません。
もちろん、その人自身に収入がなくても夫や妻の収入だけでも十分に生活できているのであれば問題ありません。
帰化申請においては、現在及び将来に渡って、公共の負担になることなく安定した生活が送れるかを判断されます。
転職したばかりの場合、「思っていた職場・業務と違った」といった理由で早期に離職することも珍しくありません。審査をする法務局としても、転職したばかりの場合「本当に安定した生活が送れるか」判断しきれないところもあります。転職回数が多いとなおさらではないでしょうか。
あくまで目安ですが都内で3人家族(夫婦+子ども1人)の場合、世帯年収400万円程度が一つの目標値になります。
影響ポイント2:仕事内容の変化
在留資格は1度取ったらあとは何でもOKというわけではありません。在留資格をもって日本に滞在し続ける限り、在留資格のルールを守り続けなければなりません。初めに就職した際は申請時に業務内容を申告し、認められた場合のみ許可を得られました。また、更新時には改めて勤務先やその時の業務内容を申告し、そこでも認められない場合は許可を得られません。
帰化申請においては、結果が出るまで在留資格はし続けなければなりません。帰化申請の申請中も在留期限の更新は行う必要があります。もし、前回の在留資格の取得や更新の申請の後に、転職をしている場合、在留期間の更新申請では現在の業務内容が審査されることになります。そうすると、通常の審査よりも厳しく見られ当然に不許可になる可能性があります。
また、転職回数が多い場合、特に数か月以内の転職を繰り返している場合は審査が厳しくなるだけでなく、過去にさかのぼって活動内容の説明が求められることもあります。
以上から、そもそもの在留資格が帰化申請中に不許可になったり、またそうなる可能性が高い場合には帰化申請も不許可になる場合があります。
影響ポイント3:離職期間について
転職をする場合で特に注意が必要なのが、「理由なく無職の期間が3か月あってはならない」というルールです。無職の期間が長い場合、それ自体が在留資格の更新に影響がでることと、年金や健康保険の未払いがある可能性があります。
会社を辞めて無職の期間であっても、基本的には国民年金を払う義務があります。もし未納がある場合は早めに払ってしまいましょう。
帰化申請中の転職は・・・?
帰化申請中に転職をしたとしても、それが原因で不許可になることはありません。ただし、当然、申請時の状況ではなく転職後の状況で審査されることになります。
先ほども説明したように、転職後は年収が一時的に下がることが多いことと、すぐに離職する可能性といった部分で審査が慎重になることは間違いありません。そのため、どうしてもの理由がないのであれば転職をするのは帰化の結果が出てからが無難です。
まとめ
以上、帰化申請における転職の回数がどのように帰化申請に影響するかを説明しました。
転職自体は帰化申請の結果に作用するものではありませんが、少なからず影響はあります。理由は、日本での転職の場合多くが転職1年目で年収が下がる可能性が高いこと、仕事内容が変化すること(在留資格に適合しているかの判断が必要)、離職期間の有無が挙げられます。「安定した生活」に転職が悪い影響をもたらす場合があるため注意が必要です。
【行政書士からのアドバイス】
転職と帰化申請のタイミングを悩まれる方は多くいらっしゃいます。転職自体が帰化申請の結果に影響する場合はケースバイケースです。帰化を検討されている方で転職のタイミングを計られている方でお悩みの方は当事務所にご相談下さい。状況をうかがいながらアドバイス致します。