上記の質問について詳しく解説します。
元日本人の方が帰化するための要件について
帰化申請では、国籍法5条で定める(いわゆる)「普通帰化」のほかに、日本人の家族がいる場合や、日本に特別な地縁がある方の場合には、「簡易帰化」に該当し一部の要件が緩和される場合があります。
「元日本人」の場合も「簡易帰化」に該当する場合があります。
国籍法8条について
国籍法8条を確認してみましょう。
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
国籍法 第八条
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
上記のように、日本人の実子・養子であったり、以前に日本人であった人で日本に住んでいる人の場合は、普通帰化と比較して一部要件が緩和される可能性があります。
国籍喪失の原因は問いません。自己の志望によって外国籍を取得した場合や日本国籍の不留保によって失った場合でも大丈夫です。住所を有する者についての解釈は先ほどのとおりです。
元日本人の帰化の要件について
上記に該当する方の帰化申請は、「日本と密接な血縁・地縁関係がある」という理由で、「普通帰化」に必要な要件のうち、一部の要件が緩和されます。
要件が緩和されるというのは、審査が緩くなったり、必要な書類の一部が少なくなるわけではありません。密接な血縁・地縁関係がある人の場合は、確認されるポイントは4つです。
- 素行が善良であること
- 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
- テロリストや反社会的勢力ではない
- 日本語能力に問題がない
つまり、元日本人の方の場合には、「日本に住所を有していて」かつ上記4つのポイントを満たしていれば帰化申請が許可される可能性があるということになります。
※ただし、法令にもある通り日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除かれます。
「素行が善良であること」について
「素行が善良であること」とは、日本の法律をきちんと遵守しているか、日本社会の安全と秩序を守ることができるかどうか(今までにも問題が無かったか)を確認されることになります。具体的には納税状況や交通違反、犯罪などの項目が確認されます。
帰化申請の流れについて
「日本に住所を有していて」の説明をする前に、帰化申請の基本的な流れを説明します。
帰化申請のためには、まずは法務局で相談を行います。法務局は、お住まいのエリアを管轄するところに行きます。
帰化の希望者はかなり多く、都市部の法務局は予約を取るのに1〜2ヶ月かかることもあります。
法務局では、まずあなたが帰化の要件を満たしているかのヒアリングを行い、集めなければならない書類を教えてもらえます。
帰化申請は、ビザの申請と異なり法務局の相談員の方と相談を何度も行います。
基本的に、「許可の見込みがある人」だけが「申請」することになります。その後、書類の準備が完了し申請が受理されると審査期間に入り、その後1年程度で結果が出ます。
この様に、帰化申請では準備から許可までスムーズでも1年、長ければ2年かかることもあり手続きは長期間に及びます。このため、大前提として生活の拠点が日本にある状態で申請をすることになります。
この期間中は日本に在留することが好ましく(出国の度に担当官の方に報告しなければなりません)、また許可後も日本に定住することを見込まれることになります。
そして、この「生活の拠点が日本にある状態」=帰化の要件でいうと「日本に住所を有し」というのは、在留資格を持って日本に在留するということになります。
「在留資格」を持って日本に在留する
住所を有する者というのは、住民票が発行されることを想定しています。外国人の場合は、3ヶ月以上の在留期間が与えられる中期滞在者には在留カードが発行され、在留カードを所持する外国人は住所を届け出ることが義務となっています。そして、多くの在留資格の取得のためには、日本で安定した生活を送ることができることを証明することが求められます。
「元日本人」の方がどのような経緯で「元日本人」かにもよりますが、多くの方が「日本人の子」で合った方が多いのではないでしょうか。その場合には「日本人の配偶者等」という在留資格を検討することになります。この在留資格は、生まれたときに両親の片方が「日本人」であれば取得できる在留資格になります。ただし、日本人の子という身分だけでは要件は満たさないため、日本での滞在費用(職業や貯金等)が証明できることが必要です。
もし、「元日本人」の方が「日本人の子」でない場合には、その他の在留資格について検討をすることになります。
帰化申請をするためには、元日本人の方だったとしても生活の拠点を日本に移して、安定して在留できる状態にすることからになります。帰化申請自体よりも、海外が長い方にとってはこのこと自体がハードルが高いかもしれません。
まとめ
以上、元日本人の方が日本国籍を再度取得するための流れについて説明しました。
元日本人の方が日本人に帰化するためには、「日本に住所を有していること」に加えて素行条件や日本語能力といった条件を満たしている必要があります。帰化申請自体は1~2年程度かかる長期間の手続きになるため、日本に生活拠点を移し何かしらの在留資格で安定的に在留ができている状態が必要になるかと思います。帰化申請自体よりも、このこと自体が一つのハードルになるかもしれません。