親が元日本人の場合、その子どもが帰化申請をする場合、審査に影響があるのか気になるところです。本編では、親が元日本人の場合の帰化申請が本人の申請にどのように影響があるのか、また申請のポイントについて解説していきます。
“元日本人の子ども”と帰化申請の関係
元日本人の方の子どもが帰化申請にどのように影響をするのかを確認をします。
“元日本人の子ども”の帰化は有利?不利?
帰化申請を検討した際に、もしご両親が“元日本人”だった場合に、一度日本国籍を離脱している過去から、自身の帰化申請に影響が出るのではないかと不安になられる方もいるのではないでしょうか。
実際のところ、それ自体は帰化申請の結果に有利・不利は関係ありません。ただし、日本に特別の血縁があるとみなされて、審査の際に見られるポイントが一部緩和ます。
これは、元日本人の子どもの場合、「簡易帰化」(国籍法6条)に該当するからです。この場合、普通帰化と比較して日本に一定年数住んでいることが求められる「住居要件」が緩和されます。
国籍法第6条は以下の通りです。
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
国籍法 第六条
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き十年以上日本に居所を有する者
上記から、“元日本人の子ども”の方で日本に引き続き3年以上在留している方は、「簡易帰化」に該当し帰化できる可能性があります。
“元日本人の子ども”とは
“元日本人”というのは下記のような方が該当します。
- 自己の志望により外国籍を取得したことにより、日本国籍を喪失した人
- 外国籍の選択により日本国籍を喪失した人
- (国籍選択を保留していた人で)催告により日本国籍を喪失した人
- 国籍喪失の宣告により日本国籍を喪失した人
- 国籍不保留により日本国籍を喪失した人
- 国籍離脱により日本国籍を喪失した人
日本人として生まれ、外国籍の取得によって日本国籍ではなくなった方も該当します。そして、自らの意思によって日本国籍でなくなったからと言って、帰化申請自体が不利になるわけではない、というのはこの部分で分かるかと思います。
「日本人の子どもで日本に住所を有する人」は帰化申請の要件はさらに緩和されますが、これはあくまで「帰化申請」の時点で両親が日本国民である必要がありますので、出生時点で日本人であってもその後、親も外国籍を取得した場合は“元日本人の子ども”という扱いになります。
“元日本人の子ども”が帰化する場合の6つの審査ポイント
帰化申請は法務局で申請をし、法務大臣が結果を判断をします。簡易帰化とは言え、審査基準が甘くなるわけではありません。6つのポイントを1つでも満たしていないと判断すると不許可になることもあります。条件を満たしているか否かの判断は、法務大臣の自由裁量です。つまり、自分では6つのポイントをすべて満たしていると思っていて申請をしても、認めてもらえないことがあるということです。
しっかりポイントを抑えるようにしましょう。
- 20歳以上で本国法によって能力を有すること
- 素行が善良であること
- お金の面で生活に心配がない
- 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
- テロリストや反社会的勢力ではない
- 日本語能力に問題がない
簡易帰化の6条では、日本と特別の血縁・地縁がある人が対象となっていることから、通常の帰化要件に課せられる居住要件(5年以上引き続き日本に住所を有する)というポイントが「3年」になるということなります。
それでは、6つのポイントの詳細を一つずつ確認してみましょう。
ポイント1 18歳以上で本国法によって能力を有すること
帰化申請は成年に達していれば申請することができます。日本では18歳以上が成年となります。また同時に、母国の法律でも成年に達している必要があります。また、ご自身で「帰化をする」といった重要な決断をすることができるということも大事なポイントです。
ポイント2 素行が善良であること
素行が善良であるということは、つまりは日本の法律をきちんと遵守しているかが大前提になります。
まずは、入国から現在に至るまでの暮らしを振り返ってみましょう。
まさか「今の在留状況がよくなくて、次のビザの更新されるかわからないから、帰化しちゃおう!」なんて人はいないと思いますが、こういう人はすでに不法滞在ですから、帰化も当然許可されません。また、日本人と結婚すると簡易帰化に該当するからといって、偽装結婚もだめです!
次に、年金、税金きちんと払っていますか?
日本の法律では、外国人も払わないといけないと定められています。会社勤めの方は、厚生年金・所得税・住民税は、お給料から天引きされているはずです。主婦(夫)でパートナーの扶養に入っている場合は、パートナーの給料明細を確認しましょう。日本人配偶者の方は、アルバイトやパートの週28時間の就労制限はありませんが、お給料が「扶養に入ることができる金額」をオーバーしているようですとそれは脱税になりますから注意して下さい。
経営者の方は、会社の税金が納めているかもチェックされます。
交通事故や犯罪は起こしていませんか?
軽微な違反は回数が少なければ大丈夫です。犯罪は不起訴処分に終われば問題ないですが、罰金刑の場合はしばらく時間を経過しないと申請できません。
当然、母国では合法でも日本では違法の場合は日本の法律が基準になります。(例えば、麻薬やけん銃の所持)
ポイント3 お金の面で生活に心配がない
安定した生活を送れている必要があります。
年収が家族構成に見合っていないほど少なかったり、返済できないほどのキャッシュローンがあったりすると、「安定している生活を送っている」とは言えません。自己破産したばかりも厳しいです。逆に、貯金がたくさんあったり(なくても大丈夫です)、不動産等の資産があると審査官へアピールするポイントになります。
経営者の方は会社の経営状態もみられます。
一時的に業績が悪化していたり、新設会社の場合は事業計画書や専門家の意見を添えて、生活に問題がないことを積極的にアピールする必要があります。
ポイント4 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
日本は二重国籍については認めておらず、日本国籍を取得すれば外国籍を離脱しなければなりません。国によっては、離脱を禁じているところもありますので事前に確認しておきましょう。
ポイント5 テロリストや反社会的勢力ではない
日本政府に対して、暴力や危険な思想を主張するような団体に結成したり加入したことのある人は帰化できません。例えば、テロリストや反社会的勢力が該当します。
ポイント6 日本語能力に問題がない
よく言われるのが、小学校3年生程度の日本語能力を有していれば問題ないと言います。
日本語能力は、申請受理後の面談で確認されます。スムーズにお話しできる方は問題ありませんが、必要なレベルに達していないことを疑われた場合、簡単な読み書きのテストを実施することもあります。
“元日本人の子ども”の方の帰化申請の注意点
簡易帰化は、申請者の環境によって一定のポイントが緩和されているに過ぎません。逆に、自分が「簡易帰化に当てはまる(=元日本人の子ども)」という証明からしなければなりません。
例えば「両親が以前日本人出会った場合」や「10年以上日本に居所があったこと」について、まずそのことを審査官にアピールしなければなりません。ご自身では当たり前すぎて疑問に思わないかもしれませんが、この前提条件から証明してく必要があります。
まとめ
以上、元日本人の子どもの方の帰化申請についてご説明いたしました。元日本人の子どもは日本と特別な血縁があるということで、普通帰化にあった居住の要件が緩和されます。しかし、他の要件についてはしっかりと満たしている必要があるので注意してください。
【行政書士からのアドバイス】
「元日本人」の子どもの場合、日本での居住要件が一部緩和されます。一方で、「元日本人」の子どもということがそれだけで不利になることはありません。当事務所では帰化申請のサポートを行っております。ご相談下さい。