【質問⑤】母国の身分関係の書類が集まりません。帰化申請はできますか?また、許可されることはありますか?

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帰化申請をするために、母国に出生証明書や家族関係の書類を取り寄せようとしていますが、母国を長く離れすぎて手に入れることができません。このような場合でも帰化申請はできますか?また許可されることはありますか?
最大限集める努力は必要ですが、どうしても集まらない場合にも、帰化申請はできますし、許可もされます。その場合にも、求められた書類と同じ意味合いを持つ書類で代用するなどの工夫が必要です。

上記の質問について詳しく解説します。

帰化申請では日本で集める書類と母国で集める書類がある

帰化許可申請で提出する書類については、「母国で集める書類」「日本で集める書類」「作成する書類」の3パターンがあります。最も収集が大変なものが「母国で集める書類」になります。

母国で集める書類について

母国で取得する書類は、国籍や身分を証明する書類です。これらの書類は基本的には公の機関から発行してもらうことになります。国によって取得する書類が変わってきます。下記の書類は、全て日本語訳が必要です。翻訳は誰がしても大丈夫ですが、翻訳者の住所・氏名及び翻訳年月日の記載は必要です。

国によっては日本で集まる書類もあれば、母国で集める必要がある書類もあります。母国に親族や代理取得を頼める知り合いがいない場合、収集に苦戦することもあるかと思います。もしくは、長いこと日本にいる場合や、そもそも母国に行ったことが無い人の場合など、母国語でのコミュニケーションが難しい場合や、そもそも母国の行政機関にご自身の情報が無い場合(消されている場合)など、色々な事情で収集が困難な場合があるかもしれませんが、原則、収集する努力をすることになります。

書類の種類(以下は一例。状況によって変わります)
国籍証明書
本国の戸籍謄本 ※国によって異なります
出生証明書 ※国によって異なります
結婚・婚姻証明書
死亡証明書証明書
養子縁組の証明書
親族関係証明書

日本で集める書類について

日本で集める書類は、資産や収入を証明する書類が中心となってきます。また、日本で取得する身分関係の書類も一部あります。これは会社員をされている方とそうでない方でも大きく書類が変わってきます。加えて、家族に日本人がいる場合は、その方に関する書類を提出することになります。

書類の名前 (以下は一例。状況によって変わります)取得場所
パスポートのコピー(出入国履歴があるページ全て)
在留カードのコピー(表・裏)
住民票の写し(世帯全員分)お住まいの市区町村の役所
在勤・給与証明書 / 在学証明書勤務先 / 学校
源泉徴収票勤務先
源泉徴収税の納付書及び領収書の写し勤務先
確定申告書の写し(対象者)(税務署)
最新年度の住民税の納税証明書(1年分)お住まいの市区町村の役所
最新年度の住民税の課税証明書(1年分)お住まいの市区町村の役所
年金納税状況が分かる書類年金事務所等
運転記録証明書(過去5年分)自動車安全運転センター
自動車運転免許証の写し(表・裏)
卒業証書の写し・卒業証明書学校
土地・家屋登記事項証明書、賃貸借契約書の写し
預貯金通帳の写し
・日本の戸籍謄本 ※1
・戸籍届出書記載事項証明書 ※2
(※家族に日本人がいる場合、状態によって必要な書類が変わってきます)
本籍地の市町村役場

※1 父母や子供、兄弟、配偶者(婚約者)等の家族に日本人がいる場合は、その人の戸籍謄本が必要です。よう父母や内縁・前配偶者、元日本人の方も含みます。
※2 出生届、死亡届、婚姻届、離婚届、その他(養子縁組、認知届、親権を証明する書面・裁判書)で該当するものがあれば準備をします。

母国の書類が無ければ許可されないのか?

「母国の書類を集めることができないのですが、これでは不許可になってしまいますか?」と聞かれることはよくあります。母国の書類と帰化の許可の条件を確認してみましょう。

帰化の許可の条件について

普通帰化 18歳以上で5年以上日本で住んでいる(うち、3年は就労ビザで働いている)

大前提となる①居住要件は、日本人の家族がいる場合や日本に深い地縁がある場合などには、緩和される場合があります。これらは簡易帰化(国籍法6~8条)と呼ばれるものになりますので、①の居住要件については、緩和されたり適用が無かったりする場合があります。そして、帰化申請では居住要件を含み7つの審査されるポイント(要件)があります。

普通帰化の7つのポイント
住居要件:継続して5年以上日本に住所があること
能力要件:18歳以上で本国法によって能力を有すること
素行要件:素行が善良であること(税金や年金をきちんと収めて、交通違反や犯罪もおかしていないこと等)
生計要件:本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の資産や仕事によって安定して生活を送れること
喪失要件:日本国籍取得によって、母国の国籍を失えることができること。もしくは無国籍者
思想関係:日本政府を攻撃するような思想を持っていたり団体に属していないこと
日本語能力:日本で生活する程度で困らない以上の日本語能力があること

通常の帰化許可申請の場合、審査されるポイントは上記の7点になります。必要書類は、これらのポイントを満たしていることを証明するために添付していくものになりますが、見て分かるように母国の書類(親族関係や身分関係)は、そもそも許可の要件にはありません。(国籍法6~8条の簡易帰化に該当する場合にはそのことを説明するために使用しますが、国籍法5条では基本的には身分関係そのものの書類は関係ありません)

母国の書類は何故必要なのか

では、何故、母国の書類を提出する必要があるのかというと、まずは申請する人の「国籍」を明確にする目的があります。次に、そもそも帰化申請というものは「戸籍」を作るための手続きになり、その「戸籍」には「母」や「父」の名前が載ります。つまり、申請する人が「どこの」「誰から」生まれた人なのかをはっきりさせなければ、「戸籍」を作ることができないのです。

必要書類には「母国の書類から国籍や家族関係を証明する」ために確認する書類と、「帰化の要件を満たしているか確認する」ための書類があるということになります。結論を言うと、身分関係の書類で出せないものがあっても、帰化の要件を満たしていることが確認できれば「許可はされる」ことになります。

しかし、提出できない身分関係の書類がある場合、例えば「戸籍謄本」の「父」と「母」の欄が空欄になる場合があります。戸籍謄本は日本では公的書類の代表格のようなものですので、この空欄が後の人生に大きな影響がある可能性も否定はできません。

母国の書類が無い場合は審査は不利なのか?

身分関係の書類が無い場合、不利になることも無くはありません。
そもそも、身分関係の書類がないことで簡易帰化に該当することが説明できない場合には、帰化申請に影響が出る可能性は否定できません。また、普通帰化に該当する方の場合でも(これはどの条件で帰化申請をされる方にも共通ですが)、「法務局の指示に従って書類を集める姿勢が無い」と判断された場合は審査は不利になります。
言語の問題でコミュニケーションが取れなくて書類が取れないのであれば通訳を雇えばよいですし、母国に親戚や知り合いがいないから書類を集められないのであれば代行会社に依頼するか、自身が帰国をして集める努力をすることを考えるべきと思います。もちろん、どうしても母国に帰れない事情がある方もいると思いますし、中には母国の行政のデータベースにそもそも自身に関する記録が無い方もいらっしゃいます。そのような場合には、最大限努力をした上で、可能な限り代替となる書類を提出する方法を検討することになります。この代替書類については、法務局の指示を仰ぐのが一番よいです。

ようやく書類が集まったが、事実と異なる記載がある場合

なんとか努力と労力の末に、集めた書類と事実に違いがある場合も、たまにあるようです。この場合は、書類を事実に正す努力が必要です。場合によっては裁判等の手続きによって真実の身分関係を明らかにし、書類上の身分関係を真実の身分関係に合致させる必要があります。

これらは全て戸籍を作るためのとても大切なことになります。また、簡易帰化に当てはまる方の場合には帰化の許可に直結する手続きになります。
そもそも帰化申請は、日本のパスポートを作る手続きではなく、戸籍を作る手続きだと言うことを忘れてはなりません。

まとめ

以上、母国の書類が集まらない場合についてご説明しました。
状況は人それぞれ、お国の事情それぞれあるかと思いますが、まずは法務局から指示を受けた書類を提出できるように努力をすることになります。どうしても難しい場合は代替の方法を取りますが、それについては法務局の指示を仰ぐのがよいと思います。
簡単にあきらめることは、「法務局の指示に従えない」とみなされ不許可になりかねないため、か最大限の努力は必要になります。

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