上記の質問について詳しく解説します。
日本人の妻・夫は一部の条件が緩和される
日本人の妻・夫の場合、帰化に必要な一部の要件が緩和されます。要件は緩和されますが、審査自体が緩くなるわけではありませんので、“簡単”になるわけではありません。
緩和ポイント① 居住要件
国籍法7条で「簡易帰化」について説明しています。要件を確認してみましょう。
第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。
国籍法 第七条
上記の条文を分かりやすく言い換えると、日本人の妻・夫の場合の人について帰化に係る要件は下記の通りとなります。
- 日本人の妻・夫で日本に3年以上居所か住所があり、現在住所がある場合
- 日本人の妻・夫になってから3年以上経過し、現在まで1年以上住所を有している場合
外国籍の方の場合、住所を持つ=住民登録ができる方は在留カードを持つ方になります。在留カードは、日本に3ヶ月以上滞在する方に交付されるカードになります。在留資格のない方や、在留資格が「短期滞在」の方の場合は、在留カードは交付されないため住民登録は基本的にはできません。
「在留資格がある」ということは、例えば「日本人の配偶者等」や「永住者」「定住者」、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの就労系のビザ(在留資格)を持って在留していると言うことを意味します。
緩和ポイント② 能力要件
能力要件とは、以下のことを言います。
帰化の申請をする時点において、日本においても・母国においても、自身で重要な意思決定が法律上可能な年齢である必要があります。日本の民法では18歳から成人(=能力要件を有する年齢)となります。
日本人の妻・夫に必要な帰化の要件とは
日本人の夫や妻の場合、前に挙げた「居住要件」や「能力要件」が緩和されます。その他に必要になる要件について確認してみましょう。
ポイント1 素行が善良であること
これは、日本の法律を守って真面目に生活していますか?ということです。まずは、入国から現在に至るまでの暮らしを振り返ってみましょう。
「今の在留状況がよくなくて、次のビザの更新されるかわからないから、帰化しちゃおう!」という方はいらっしゃらないとは思いますが、こういう方はそもそも帰化の許可はされません。こういう方はすでに不法滞在の状態であり、また、日本人と結婚すると簡易帰化に該当するからとそれ目的だけに結婚をすることは偽装結婚に値します。
まずは大前提、現在お持ちの在留資格ごとに認められている活動を行っているか、身分でいることを確認します。
年金、税金きちんと払っていますか?
日本の法律では、外国人も払わないといけないと定められています。会社勤めの方は、厚生年金・所得税・住民税は、お給料から天引きされているはずです。主婦(夫)でパートナーの扶養に入っている場合は、パートナーの給料明細を確認しましょう。
在留資格「日本人配偶者等」や身分系の在留資格の方は、アルバイトやパートの週28時間の就労制限はありませんが、扶養の範囲以上に働いている場合は、ご自身で税金や社会保険を支払う場合もあります。扶養に入っている方の場合は、お給料が「扶養に入ることができる金額」をオーバーしていないか確認をして下さい。
経営者の方は、会社の税金が納めているかもチェックされます。
交通事故や犯罪は起こしていませんか?
軽微な違反は回数が少なければ問題ありませんが、最近はこの基準も厳しくなっています。こう通じ事故や違反は無いに越したことはありません。犯罪は不起訴であれば問題ないですが、罰金刑の場合はしばらく時間を経過しないと申請できません。犯罪になるかどうかの基準は、日本の法律が基準です。母国で合法のものでも日本では違法の場合で違法の場合は日本の法律が優先されます。
ポイント2 お金の面で生活に心配がない
日本人の妻・夫の方の場合は、ご自身だけで生活を安定させるほどの収入が無い場合でも、世帯年収が十分にあれば問題ありません。大前提として、安定した生活を送れている必要があります。年収が家族構成に見合っていないほど少なかったり、返済できないほどのキャッシュローンがあったりすると、「安定している生活を送っている」とは言えません。同様に、自己破産したばかりも厳しいです。
ご本人や(生活を支えている)配偶者の方が経営者の方は会社の経営状態もみられます。一時的に業績が悪化していたり、新設会社の場合は事業計画書や専門家の意見を添えて、生活に問題がないことを積極的にアピールする必要があります。
ポイント3 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
日本は二重国籍については認めておらず、日本国籍を取得すれば外国籍を離脱しなければなりません。国によっては、離脱を禁じているところもありますので事前に確認してください。また、その場合は残念ながら帰化申請はできません。これに関しては、不安な方は自分で母国の政府に事前に確認してみましょう。
ポイント4 テロリストや反社会的勢力ではない
日本政府に対して、暴力や危険な思想を主張するような団体に結成したり加入したことのある人は帰化できません。例えば、テロリストや反社会的勢力が該当します。
FacebookなどもSNSで過激な発言をしていると、審査に影響がある場合があります。
ポイント5 日本語能力に問題がない
よく言われるのが、小学校3年生程度の日本語能力を有していれば問題ないと言います。申請受理後の面談では日本語能力を確認されますし、簡単な読み書きのテストもあります。
日本人の配偶者の方の中には入国して間もない方も多く、日本語能力が足りないと判断されることも多くありますので、日本語に不安がある方の場合は十分に練習されてから法務局に訪問されることをお勧めします。
まとめ
以上、日本人の妻や夫の方が帰化申請をする場合の要件について解説しました。
日本人の配偶者の場合は、「居住要件」と「能力要件」が緩和されます。一般の外国人の方と比べて、短い在留年数で帰化が許可される場合があります。(能力要件の他、)その他の要件については一般の方と同様に審査され、審査が優しくなるわけではありませんので、申請までの準備については一般の方同様に念入りに行う必要があります。