日本人の実子・養子であったり、以前日本人であった人で日本に住んでいる人や無国籍の人は日本国籍取得・帰化できる可能性があります。このような場合は、「簡易帰化」に当てはまる場合があります。「簡易帰化」は普通帰化に係る条件のうち一定の条件が緩和されます。本編では、簡易帰化の国籍法8条に定められている日本と密接な血縁・地縁関係がある人の要件についてご説明致します。
“日本と密接な血縁・地縁関係がある人”とはどんな人?
「日本と密接な血縁・地縁関係を有する人」がどういう人なのかを具体的にどういう方なのかを、国籍法8条を確認してみましょう。
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
国籍法 第八条
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
上記のように、日本人の実子・養子であったり、以前に日本人であった人で日本に住んでいる人や無国籍の人は帰化できる可能性があります。
日本人の子(養子を除く)で日本に住所を有する者
両親が日本人である必要はなく、父母の一方が日本人であれば大丈夫です。住所を有する者というのは、住民票が発行されることを想定しています。短期滞在等の観光ビザでは、住所を有していると言えません。外国人の場合は、3ヶ月以上の在留期間が与えられる中期滞在者には在留カードが発行され、在留カードを所持する外国人は住所を届け出ることは義務となっています。
18歳未満の方で日本人の子どもの場合は、生まれた時に外国の国籍を選択した場合や、「国籍留保の届け出」をせずに日本国籍を喪失した場合であっても、帰化申請をせず届け出によっても日本国籍が取得できることがあります。(国籍法12条、17条)
また、国籍選択の留保をしている場合は、国籍選択の届け出をすることで日本国籍を取得することもできます。
日本人の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ縁組の時に未成年であった者
日本人との養子関係が法的に継続していることが条件です。成人後に養子縁組をした場合はこの要件には該当しません。
これに該当する主な例として、兄弟の子どもを養子に迎い入れる場合や、外国籍の方と結婚しその(未成年の)連れ子と養子縁組するようなケースが該当します。
日本国籍を失った者で日本に住所を有するもの
国籍喪失の原因は問いません。自己の志望によって外国籍を取得した場合や日本国籍の不留保によって失った場合でも大丈夫です。住所を有する者についての解釈は先ほどのとおりです。
日本で生まれ、かつ出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの
日本で生まれたこの場合で、父母ともに不明か、父母が無国籍であるときはその子供に日本国籍を付与されます。
日本は「無国籍」が発生しないようにしており、そのために設けられた規定になります。
簡易帰化(8条)の4つのポイント
上記に該当する方の帰化申請は、「日本と密接な血縁・地縁関係がある」という理由で、「普通帰化」に必要な要件のうち、一部の要件が緩和されます。
要件が緩和されるというのは、審査が緩くなったり、必要な書類の一部が少なくなるわけではありません。密接な血縁・地縁関係がある人の場合は、確認されるポイントは4つです。この4つのポイントを1つでも満たしていないと判断されると不許可になることもあります。
- 素行が善良であること
- 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
- テロリストや反社会的勢力ではない
- 日本語能力に問題がない
帰化申請は法務局で申請をし、法務大臣が結果を判断します。条件を満たしているか否かの判断は、法務大臣の自由裁量です。また、それぞれ4つのポイントで特にポイントとして確認される点は、以下になります。
ポイント1 素行が善良であること
素行が善良であるということは、つまりは日本の法律をきちんと遵守しているかが大前提になります。
まずは、入国から現在に至るまでの暮らしを振り返ってみましょう。
ま・さ・か「今の在留状況がよくなくて、次のビザの更新されるかわからないから、帰化しちゃおう!」なんて人はいないと思いますが、こういう人はすでに不法滞在ですから、帰化も当然許可されません。また、日本人と結婚すると簡易帰化に該当するからといって、偽装結婚もだめです!
在留資格の範囲に定められていない活動は基本的にはできません。現時点で働くビザをお持ちの方は、お持ちの在留資格に定められた範囲内でお仕事をしていますか?例えば『技術・人文知識・国際業務』のビザをお持ちなのに、単純労働を毎日している場合ですと、資格外の活動になってしまう場合もあります。
次に、年金、税金きちんと払っていますか?
日本の法律では、外国人も払わないといけないと定められています。会社勤めの方は、厚生年金・所得税・住民税は、お給料から天引きされているはずです。主婦(夫)でパートナーの扶養に入っている場合は、パートナーの給料明細を確認しましょう。日本人配偶者の方は、アルバイトやパートの週28時間の就労制限はありませんが、お給料が「扶養に入ることができる金額」をオーバーしているようですとそれは脱税になりますから注意して下さい。
経営者の方は、会社の税金もきちんと納めているかもチェックされます。
交通事故や犯罪は起こしていませんか?
軽微な違反は回数が少なければ大丈夫です。犯罪は不起訴処分に終われば問題ないですが、罰金刑の場合はしばらく時間を経過しないと申請できません。
当然、母国では合法でも日本では違法の場合は日本の法律が基準になります。(例えば、麻薬やけん銃の所持)
ポイント2 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
日本は二重国籍については認めておらず、日本国籍を取得すれば外国籍を離脱しなければなりません。国によっては、離脱を禁じているところもありますので事前に確認してください。
ポイント3 テロリストや反社会的勢力ではない
日本政府に対して、暴力や危険な思想を主張するような団体に結成したり加入したことのある人は帰化できません。例えば、テロリストや反社会的勢力が該当します。
ポイント4 日本語能力に問題がない
よく言われるのが、小学校3年生程度の日本語能力を有していれば問題ないと言います。申請受理後の面談では日本語能力を確認されますし、簡単な読み書きのテストもあります。もちろんこれは大人の場合です。義務教育期間に該当する年齢の子どもの場合は、小学校・中学校に通っていれば問題ないでしょう。
簡易帰化(8条)の注意点
簡易帰化は、申請者の環境によって一定のポイントが緩和されているに過ぎません。逆に、自分が「日本と密接な血縁・地縁関係を有する人」という事実の証明からしなければなりません。つまり、例えば「日本人の子どもである」ことや「以前、日本人であった」ということについて、まずそのことを審査官にアピールしなければならないということです。ご自身では当たり前すぎて疑問に思わないかもしれませんが、この前提条件から証明してく必要があります。
簡易帰化に該当する方で多くの方は、法務局へ申請するための書類が多くなる傾向があります。法務局や帰化の専門家によく相談し、アドバイスをもらわれるほうがよいでしょう。
まとめ
以上、簡易帰化の国籍法8条についてご説明いたしました。国籍法8条は日本人の実子・養子であったり、以前日本人であった人で日本に住んでいる人や無国籍の人が該当します。通常の帰化の要件に比較して、一部の要件が緩和されます。一方で、自分の身分(日本人の実子・養子)、元日本人、無国籍ということをアピールしていかなければなりません。
【行政書士からのアドバイス】
日本人の子の場合や元日本人の方の場合、帰化の要件が一部緩和されます。年齢や生活状況によっては帰化を悩まれる方も多いのではないでしょうか。気になることがある場合には、お気軽に当事務所にお問合せ下さい。