「帰化申請」って難しい!?
はい、非常に難しい手続きです。時間も手間もとにかくかかります。思い立ってから許可まで最短でも1年、長い人では2年かかることも普通です。あまりに多くの書類を集めなければならないため、途中で挫折される方もいらっしゃるくらいです。本編では帰化申請の流れを解説します。帰化までのイメージをつかんでいただけたらと思います。
帰化申請の流れ
ある一定の条件を満たしている外国人は、日本人に帰化することができます。この帰化をするために行う手続きが「帰化許可申請」になります。
そして、「帰化許可申請」の管轄はビザの時のように出入国在留管理庁ではなく、法務局になります。法務局でも、お住まいの地区を管轄していて、かつ帰化についての相談を受け付けている法務局が窓口になります。
帰化許可申請では、法務局に申請書を提出し、面談等の審査を経て、法務大臣の許可を得られることで帰化をすることができます。
ただし、申請書や細かい要件は非常に複雑で「誰でも・簡単に」できるものではありません。帰化申請とビザ申請で大きく異なるポイントとして、「許可に値する人か」を事前に法務局の相談員の方に見てもらうという点があります。そして、相談員の方の指導を受けながら、書類を集め、申請書類を作成し、準備が整っている人のみ受付をしてもらえます。
帰化申請をするためには、まず法務局に帰化の相談についての予約をとります。そこで集める書類等を指示してもらえるのでそれを集めて、再度法務局に行くことになります。その書類をもとに、改めて要件を満たしているかをチェックしてもらいます。
この法務局への相談は3〜4回になることが多いようです。
法務局の相談員の方のチェックをパスしたら、いよいよ申請受付けになります。受付後2〜3ヶ月後に法務局より面談の連絡があり、面談を行います。
申請結果は、申請日から約1年後ぐらいに出ます。まず官報に掲載され、その後、法務局より結果の連絡がきます。許可であれば、帰化届けや在留カード返却の手続きを行なって帰化申請は完了です。もし万が一、不許可であっても指摘されたところを改善できれば再申請も可能です。(ただし、審査は入念にされることになりハードルは上がります)
上記のように、帰化申請をしようと思ってから許可が出るまで早くても1年半~2年程度かかります。法務局に何度も通ったり、必要な書類を集めるのに市区町村役場や税務署に行ったりとなかなか手間もかかります。
1、まずは要件の確認!
帰化申請の許可率は約90%以上です。一見許可率が高そうに見えますが、厳しい要件をクリアし、またそのクリアしているということを証明できなければそもそも「申請」すらできません。要件を満たしていない状態で法務局に行っても門前払いを受けるだけですので、まずは自分が要件を満たしているかを確認してみましょう。
帰化の種類について
まず、帰化には3種類あります。
- 普通帰化 (国籍法5条で規定)
- 簡易帰化 (国籍法6〜8条で規定)
- 大帰化 (国籍法9条で規定)
※日本に対して特別に功労の実績のある外国人が対象。ただし、前例なし
普通帰化について
普通帰化は、すべての基本的となる要件です。
18歳以上で5年以上日本に住んでいる人が対象になります。
引き続き5年以上住んでいるというのは、3年以上は就労系のビザで滞在していること、連続して90日以上出国していたり、年間通算150日以上日本にいない場合は該当しません。また、留学生ビザで3年間のアルバイトではダメです。「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」、「技能」等の就労が可能な在留資格での在留が必要です。一度長期の出国をするとリセットされてしまい、再び日本に戻ってきてから5年が再スタートしてしまうので注意してください。
簡易帰化について
簡易帰化は特別帰化とも言われ、日本人の家族がいたり、日本に特別の縁がある人が該当します。主に「5年以上引き続き日本に住んでいる」という部分が緩和されるので「簡易帰化」のような言い方をしています。
- 日本人のであった人の子(養子をの除く)で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有する人
- 日本で生まれた人で、3年以上日本に住所または居所を有し、父母(養父母を除く)が日本生まれの人
- 引き続き、10年以上日本に居所を有する人
- 日本人の配偶者(夫または妻)である外国人で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有し、現在も日本に住所を有している人
- 日本人の配偶者(夫または妻)である外国人で、婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住所を有している人
- 日本人の子(養子を除く)で日本に住所を有する人
- 日本人の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、縁組の時に本国で未成年出会った人
- 元日本人(日本に帰化した後、日本国籍を失った人を除く)で日本に住所を有する人
- 日本生まれで出生のときから無国籍で引き続き3年以上日本に住所を有する人
5つのポイントについて
普通帰化の場合、先ほど挙げた要件(20歳以上、5年以上の在留)だけでは足りません。真面目に日本で暮らしているか、生活に問題ないか等をみられます。
簡易帰化の場合は、ケースによっては緩和される要件もあります。
- 素行が善良であること(税金・年金払っているか?犯罪は犯していないか?)
- お金の面で生活に心配がない
- 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
- テロリストや反社会的勢力ではない
- 日本語能力に問題がない
2、法務局へ相談へ行きましょう
「真面目に暮らしている」「生活も不自由ない」「日本語もできる」
と、ご自身では思っていても、法務局にも求めている基準があります。そのため、まずは「要件に満たしてそうだな」と思われたら、法務局に相談に行きましょう。お住まいの住所を管轄している法務局に早速予約をとりましょう。
相談員の方があらためて要件を満たしているかチェックしてくれます。そして、収集書類についての指示をしてくれます。
3、書類の準備をします
帰化申請は「許可・不許可」について法務大臣が裁量権を持っていると言われています。つまり、法務大臣が「この人は日本で真面目に暮らしてきた。帰化しても問題ない!」と判断しなければ許可を得られません。帰化許可申請は書面による審査が中心になるため、法務大臣に申請書類でアピールしなければなりません。
準備する書類は、主に以下の3つに分類されます。
- 自分で作成する書類
- 国籍や身分を証明する書類
- 資産や収入を証明する書類
帰化には10のパターンがあり、抑えるポイントもそれぞれの類型によって変わってきます。そのため、準備しなければならない書類は人それぞれです。また、職業や年齢、国籍によっても必要な種類は変わってきます。また、収集する場所も日本で集められるものもあれば、母国で集めなければならないものもあります。
自分で作成する書類について
自分で作成する書類は以下になります。在留状況にもよりますが、主に以下の書類を作成します。15歳未満の場合は、履歴書や、生計の概要、帰化の動機書などの作成が不要になります。(※状況次第のため、法務局の指示に従ってください)
- 帰化許可申請書
- 親族の概要
- 履歴書(その1)(その2)
- 帰化の動機書
- 生計の概要(その1)(その2)
- 事業の概要(会社を経営されている人)
- 居宅附近の略図等(3年分)
- 勤務先附近の略図等(3年分)
- 申述書(主に両親が作成)
日本で集める書類
日本で集める書類は以下になります。主に、市区町村役場で入手するものや会社にお勤めの方はその書類が中心になってきます。
※一般的な必要な書類を挙げていきます。下記を完璧に集めたとしても「書類が足りない」と言われることもあるので参考程度にしてください。
書類の名前 | 取得場所 |
---|---|
パスポートのコピー(出入国履歴があるページ全て) | ー |
在留カードのコピー(表・裏) | ー |
住民票の写し(世帯全員分) | お住まいの市区町村の役所 |
在勤・給与証明書 / 在学証明書 | 勤務先 / 学校 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
源泉徴収簿の写し | 勤務先 |
源泉徴収税の納付書及び領収書の写し | 勤務先 |
確定申告書の写し(対象者) | (税務署) |
最新年度の住民税の納税証明書(1年分) | お住まいの市区町村の役所 |
最新年度の住民税の課税証明書(1年分) | お住まいの市区町村の役所 |
厚生年金保険料納入告知額・領収済額通知書 又は社会保険料納入確認書(1年分) / 国民年金記録の写し | 年金事務所 |
運転記録証明書(過去5年分) | 自動車安全運転センター |
自動車運転免許証の写し(表・裏) | ー |
卒業証書の写し・卒業証明書 | 学校 |
土地・家屋登記事項証明書、賃貸借契約書の写し | ー |
預貯金通帳の写し | ー |
・日本の戸籍謄本 ※1 ・戸籍届出書記載事項証明書 ※2 (※家族に日本人がいる場合、状態によって必要な書類が変わってきます) | 本籍地の市町村役場 |
※1 父母や子供、兄弟、配偶者(婚約者)等の家族に日本人がいる場合は、その人の戸籍謄本が必要です。よう父母や内縁・前配偶者、元日本人の方も含みます。
※2 出生届、死亡届、婚姻届、離婚届、その他(養子縁組、認知届、親権を証明する書面・裁判書)で該当するものがあれば準備をします。
母国で集める書類
母国で集める書類は、身分を証明する書類が中心になります。これは、国籍によっては集める書類は大きく変わってきます。また、国によっては母国現地でしか入手できない場合、有効期限がある場合など、入手~申請までをスムーズに行わなければならない書類もあります。
母国の書類はなるべく優先して取得の手続きをされることをお勧めいたします。
書類の種類 | 取得場所 |
---|---|
国籍証明書 | 本国 |
・本国の戸籍謄本(父母及び配偶者の父母の記載があるものが必要) ・出生証明書(本人・兄弟・父母) ※国によって異なります | 本国 |
結婚・婚姻証明書(本人・父母) | 本国 |
母国で集める書類も、在留状況や家族構成によって必要なものが変わってきます。法務局の指示に従いましょう。
4、申請・面談
いよいよ申請…!
いよいよ書類が集まったら、改めて法務局に申請書類を持っていきます(ここでも予約してくださいね)。
申請書類は、特に指示がなければ2部持参します。
1部は基本的に原本、もう1部はコピーで構いません。基本的に母国の結婚証明書や大学の卒業証明書等、「生涯1部しか取得できないもの」以外は原本を提出します。
(※法務局によってはローカルルールもある場合もあります)
帰化申請の基本は、本人出頭です。15歳未満の場合には代理申請もできます。その場合でも法定代理人(国籍にもよりますが基本的には親)が申請に行くことになります。
面談は、また後日。
帰化申請の審査の一つである面談は、申請日には行わず、後日改めて行うことになります。申請の日から2〜3ヶ月後に法務局から連絡があり、面談の日を伝えられます。
面接では帰化の動機について聞かれたり、日本語能力について確認をされます。
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- 帰化の動機について
- 家族構成について
- 仕事内容や収入、家計について
- 日本で真面目に生活しているかについて(納税や交通事故、在留状況等)
面談で一番大切なことをお伝えします。
それは、「絶対に嘘をつかないこと」です。
人間ですので、誰しも聞かれたくないことや具合の悪いことはあります。日本の行政機関はデータベースで繋がっていて、隠していてもバレるものはバレます。もしバレても「大したことではない」と判断されれば許可されますが、一方で「嘘をついている」と判断されれば不許可となります。もし、その嘘が重大なものであればあなたの在留そのものに関わってくる(=在留期間の更新にも影響してくる)と思っていてください。
嘘をつくつもりはなくても、申請書の内容と異なる話をすると不許可になる場合もありますので、事前に申請書の内容に目を通されてから面接に挑むようにして下さい。
5、面談後について
面談後の過ごし方
面談後の時間は、「審査期間」です。引き続き、真面目に生活をしましょう。
不許可になる人に多い理由を挙げます。油断していることが原因の理由が多いですね…。気をつけましょう。
- 長期出張で日本にいない
- 税金・年金を滞納してしまった
- 交通違反を起こしてしまった
- 犯罪(暴力事件、万引き等の窃盗)を起こしてしまった
- 転職をして年収が大幅に下がった
- 浪費をして生活源である貯金がなくなってしまった…
また、申請後に法務局から「追加書類」の提出を求められる場合もあります。びっくりされるかもしれませんが、きちんと提出をしましょう。
許可だった場合
帰化が許可されると、まず官報に掲載されます。官報は官報販売所や政府の刊行物センターで購入が可能です。また、インターネットで確認することもできます。(インターネット版官報)
晴れてこの日から日本人です!
その後、法務局から呼び出しをされて「帰化者の身分証明書」が交付されます。
また、必ず行わなければならない手続きがあります。
- 在留カードの返却 (14日以内に入国管理局宛に返却)
- 帰化届け提出(1ヶ月以内に市区町村役場に提出)
この他にも、該当する場合にはやるべき手続きもあります。
不許可だった場合
一度不許可になってしまったとしても、もう二度と帰化申請ができないわけではありません。
もし、帰化申請を再チャレンジされることを検討している場合には、不許可の原因となったことを改善ししてから再申請をすることになります。この場合には、帰化の専門家に法務局での相談に同行してもらうことをお勧め致します。プロの指導の下、不許可の原因をきちんと改善できれば、また挑戦をすることも可能です。
まとめ
以上、帰化申請の流れを説明いたしました。
日本の帰化申請は、諸外国と比較してもハードルが高いと言われています。また、準備から許可までに長い時間がかかります。帰化申請は必ずその人にとって申請に適した時期があります。要件が整っていないときに無理やりするものではなく、しっかり準備できたときにするのがスムーズに許可されるためのコツとなります。