帰化申請は、日本人になりたい外国人であれば誰でもできるものではありません。さらに、申請が受理されても必ず許可されるものでもありません。帰化の許可は法務大臣が行いますが、裁量権があると言われています。ある程度は審査で見られるポイントが決まっていますので、まずはそれを把握しましょう。
帰化申請ができる人の要件とは
帰化は、要件の違いによって大きく種類が3つあります。
- 普通帰化 (国籍法5条で規定)
- 簡易帰化 (国籍法6〜8条で規定)
- 大帰化 (国籍法9条で規定)
最もベーシックなものとして「普通帰化」があります。普通帰化は基本的には7つのポイントを満たしている必要があります。「簡易帰化」「大帰化」は、日本への定着度や貢献度によって一部のポイントが緩和されることになります。
まずは、「普通帰化」や「簡易帰化」にご自身が該当するかを確認します。そして、その大枠に該当していることが確認できた後、細かいポイントがさらに該当しているかを確認します。
普通帰化の大枠について
普通帰化については、国籍法第5条で定められています。
まずは、上記を満たしている必要があります。その後、細かい7つのポイントをきちんと満たしているかをチェックしていきます。
簡易帰化の大枠について
一方、簡易帰化は、国籍法第6条〜8条に定められています。日本で生まれた人や配偶者が日本人の人が当てはまることが多いです。普通帰化の要件を満たさなかった人は確認してください。
- 日本人のであった人の子(養子をの除く)で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有する人
- 日本で生まれた人で、3年以上日本に住所または居所を有し、父母(養父母を除く)が日本生まれの人
- 引き続き、10年以上日本に居所を有する人
- 日本人の配偶者(夫または妻)である外国人で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有し、現在も日本に住所を有している人
- 日本人の配偶者(夫または妻)である外国人で、婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住所を有している人
- 日本人の子(養子を除く)で日本に住所を有する人
- 日本人の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、縁組の時に本国で未成年出会った人
- 元日本人(日本に帰化した後、日本国籍を失った人を除く)で日本に住所を有する人
- 日本生まれで出生のときから無国籍で引き続き3年以上日本に住所を有する人
「簡易帰化」という名前ですが、「普通帰化」と比較して要件が一部緩和されることを意味しており、審査が簡単になるわけでも提出する書類が減るわけではありません。
大帰化について
日本に対して特別に功労の実績のある外国人は、要件を満たしていなくても法務大臣が国会の承認を得てその帰化を許可されます。ただし、過去に例はありません。
帰化の7つのポイント
帰化申請は法務局で申請をし、法務大臣が結果を判断をします。法務大臣の自由裁量で、7つのポイントを1つでも満たしていないと判断すると不許可になることもあります。つまり、自分では7つのポイントをすべて満たしていると思っていて申請をしても、法務大臣が認めなければ許可されないことがあるということです。
国籍法第5条をみてみましょう。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
国籍法第5条
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 18歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
例えば2項の「18歳以上」という部分は、出生証明書などの提出によって紛れもない真実であることを証明するのは容易です。一方で、3項のように「素行が善良」については審査する人によって判断が変わる部分になります。とは言え、審査官がチェックするポイントは決まっています。また、4項においても同様に審査官がチェックするポイントは決まっています。また、一方で条文には書かれていない部分がポイントになることもあります。
このチェックポイントを一つずつ確認してみましょう。
ポイント1 引き続き五年以上日本に住所を有すること
これは、日本に入国してきて「5年間在留カードを持っていた」ということだけではダメです。「引き続き」日本にいなければなりません。みなし再入国期間内の一時帰省や出張であっても3ヶ月以上連続して出国している場合や、年間で150日以上海外に行っている場合には、「引き続き」を満たさないことになります。
一度長期に日本を離れることになると、そこで「引き続き5年」はリセットされて、その帰国後から5年間がカウントされるので注意しましょう。
加えて、5年間の在留のうち、3年間は就労系の在留資格で就労している必要があります。例えば、留学生で資格外活動許可を取得した状態でアルバイトしている期間は、「働いている期間」とみなされません。
ポイント2 18歳以上で本国法によって能力を有すること
帰化申請は成人(民法で18歳以上)と決められています。また、ご自身で「帰化をする」といった重要な決断をすることができるということも大事なポイントです。
ポイント3 素行が善良であること
素行が善良であるということは、つまりは日本の法律をきちんと遵守しているかが大前提になります。
まずは、入国から現在に至るまでの暮らしを振り返ってみましょう。
まさか「今の在留状況がよくなくて、次のビザの更新されるかわからないから、帰化しちゃおう!」なんて人はいないと思いますが、こういう人はすでに不法滞在ですから、帰化も当然許可されません。また、日本人と結婚すると簡易帰化に該当するからといって、偽装結婚もだめです!
次に、年金、税金きちんと払っていますか?
日本の法律では、外国人も払わないといけないと定められています。会社勤めの方は、厚生年金・所得税・住民税は、お給料から天引きされているはずです。主婦(夫)でパートナーの扶養に入っている場合は、パートナーの給料明細を確認しましょう。日本人配偶者の方は、アルバイトやパートの週28時間の就労制限はありませんが、お給料が「扶養に入ることができる金額」をオーバーしているようですとそれは脱税になりますから注意して下さい。
経営者の方は、会社の税金が納めているかもチェックされます。
交通事故や犯罪は起こしていませんか?
軽微な違反は回数が少なければ大丈夫です。犯罪は不起訴処分に終われば問題ないですが、罰金刑の場合はしばらく時間を経過しないと申請できません。
当然、母国では合法でも日本では違法の場合は日本の法律が基準になります。(例えば、麻薬やけん銃の所持)
ポイント4 お金の面で生活に心配がない
安定した生活を送れている必要があります。
年収が家族構成に見合っていないほど少なかったり、返済できないほどのキャッシュローンがあったりすると、「安定している生活を送っている」とは言えません。自己破産したばかりの方も厳しいです。逆に、貯金がたくさんあったり(なくても大丈夫です)、不動産等の資産があると少しだけ有利になるとも言われています。
経営者の方は会社の経営状態もみられます。一時的に業績が悪化していたり、新設会社の場合は事業計画書や専門家の意見を添えて、生活に問題がないことを積極的にアピールする必要があります。
ポイント5 日本国籍の取得によって、母国の国籍を離脱できる
日本は二重国籍については認めておらず、日本国籍を取得すれば外国籍を離脱しなければなりません。国によっては、離脱を禁じているところもありますので事前に確認してください。
ポイント6 テロリストや反社会的勢力ではない
日本政府に対して、暴力や危険な思想を主張するような団体に結成したり加入したことのある人は帰化できません。例えば、テロリストや反社会的勢力が該当します。
ポイント7 日本語能力に問題がない
よく言われるのが、小学校3年生程度の日本語能力を有していれば問題ないと言います。申請受理後の面談では日本語能力を確認されますし、簡単な読み書きのテストもあります。
7つのポイントについて、動画にまとめましたのでご覧ください。
それぞれの条件に必要な要件まとめ
簡易帰化の場合は、上記の7つのポイントのうち住居条件(ポイント1)、配偶者の場合は年齢の条件(ポイント2)、子どもの場合はさらに生計条件(ポイント4)が緩和される場合があります。
個々で要件が異なりますので詳細は↓の記事を参照してください。
まとめ
以上、帰化申請の要件についてご説明いたしました。
帰化には、普通帰化、簡易帰化、大帰化と3つの種類があり、それぞれ必要な要件が異なります。大前提として、今まで真面目に法律を守りながら生活をしてきたこと、日本で安定した生活を送れていることが重要なポイントになります。その他にも、日本で生活する分には困らない程度の日本語能力があることも審査されます。また、母国の国籍を離脱しなければならない等のポイントも忘れずに事前に確認しておきましょう。